久しぶりに、例の韓国・加徳島新国際空港の件です。
これもまた、偉大な文在寅前大統領の「遺産」といえます。
文在寅の遺産「加徳島新国際空港」
そもそも、この加徳島空港は、文在寅政権下の2021年02月26日に「加徳島新空港建設のための特別法」を通過させて推進することになりました。
この特別法が国会で通過したのは、極めて政治的な理由です。
※しかも法案通過、すなわち空港建設の推進は、渋っていた当時の国土交通部大臣を文在寅大統領が鶴の一声で黙らせた結果です。その意味で加徳島空港は完全な文在寅マターということになります。
↑加徳島の場所。釜山のすぐ西です PHOTO(C)GoogleMap
空港建設予定地の加徳島は釜山のすぐ西にあります。2021年04月08日に行われる釜山市長選挙が行われる直前に法案を通過させ、要は地元にお金が落ちるようにしたのです。
「『共に民主党』は加徳島に新国際空港を造ることにしました。次の市長選挙では一つよろしく!」というわけです。
結果、どうなったかというと……傑作なことに、釜山市長選挙では『共に民主党』の候補が惨敗するという結果になりました。
地元にお金をばらまきますよ!と法律まで通したのに勝てなかったのです。
ちなみにこのときの選挙はソウル市長選挙も行われ、現市長である呉世勲(オ・セフン)さんが、やはり『共に民主党』の候補に大差をつけて圧勝しました。
ときの世論は「『共に民主党』はいい加減にしろ」だったのです。
法律を通したおかげで今も計画は生きている!
地元への利益誘導で票を買おうとしたのですが、惨敗。「ざまあ(笑)」な結果となったのですが、問題は――法律を通過させてしまったがために、もはや推進する価値もないのに、計画が今も生きていることです。
Money1でも過去の記事でご紹介しましたが、そもそも加徳島に空港が造るという計画は、過去に「採算性がない」と否定されています。しかも、国内の利権とは関係のない外国(フランス)の企業が調査を行って、そのような結論を出しているのです※。
※3つの建設予定地のうち、加徳島が一番点数が低かった。
であるにもかかわらず、卑劣な文在寅前大統領は釜山市長選挙に勝つために、古い計画を引っ張り出してこれを推進しました。
惨敗したので、文在寅の思惑は外れ、本人からすれば「後のことなど知るもんか」でしょうが、それで困るのは国民です。なぜ、採算性がないと分かっているところに新国際空港を造らないとならないのか?です。
爆進する「加徳島空港建設」
国土交通部は計画を止めていません。
2023年08月24日、国土交通部は「新空港建設事業の基本計画案を策定し、年内に確定・告示する」と明らかにしました。
2024年初めに敷地造成のために設計施工一括入札方式で発注し、2024年末には着工。『2030釜山世界博覧会』開催前の2029年12月までに開港する――という計画です。
ちなみに釜山で「世界博覧会」が開催されるとまだ決まってはいません。
韓国メディアの報道によると、国土交通部の関係者は「(釜山エキスポの誘致など)外部の変数に関係なく、加徳島新空港の建設日程を順調に進める計画だ」と述べた――とのこと。
尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は『2030釜山世界博覧会』誘致に熱心です。尹政権は「文在寅の負の遺産」に、これ幸いと乗っかるつもりなのです。
ばかだなあ。
加徳島新空港は、釜山江西区加徳島一帯の陸上・海上に造成される予定で、
・24時間運営される国際空港
・2065年までに国際線旅客2,326万人、国際線貨物33万5,000tを達成
・釜山新港と連携して海上・航空中心の航空複合物流を構築
・空港経済圏の活性化を図る
・加徳島周辺の海洋生態および自然環境と調和する低炭素・環境空港
という目標を掲げています。
事業費が2倍以上に膨らんだ上に鉄火場の工事
で、ナンボかかるんや?――ですが、推定事業費は「15兆4,000億ウォン」となっています。
この金額は、2022年の事前妥当性調査で推定された「13兆7,600億ウォン」から10%も増えました。
ちなみに、当初の釜山市の計画では事業費は「7兆ウォン台」だったのです。つまり、今回国土交通部が出した事業費の予定は2倍以上に膨らんだことになります。
「それで済むのか?」という懸念の声が上がっています。
Money1でもかつてご紹介したことがあるのですが、調査した結果、非常に軟弱地盤であって工事は難航すると予測されているのです。
また最大の問題は、工期が5年余りも短縮されたことです。
当初の予定では、開港時期は「2035年06月」だったのですが、「2029年12月」となったのです。
最悪、お金はばんばん刷ればいいですが、時間はお金で買えません。
これも「釜山世界博覧会」が2030年に行われるからです(繰り返しますが世界博覧会が釜山で開催されるとは決まっていません)。
そもそも海上空港だった計画が陸・海上空港に変更されたのも工期短縮のためと見られます。それでも陸と海の地盤沈下速度が異なる「不等沈下」問題など解決しなければなりません。
「できるかな?」です。
(吉田ハンチング@dcp)