2023年09月11日、韓国で興味深い判決が出ました。
ソウル中央地裁は、『韓国コルマー』が『インターコスコリア』と元研究員を相手に起こした営業秘密侵害禁止などの訴訟第1審で、『韓国コルマー』勝訴の判決を下しました。
裁判所は、元職員と『インターコスコリア』に流出した『韓国コルマー』の営業秘密を廃棄し、共同で2億ウォンおよびこれに対する遅延利息を支払うよう命じました。
コスメに興味のない方はご存じないでしょうが、『韓国コルマー』は化粧品、健康食品、医薬品を製造する大手ODM企業です。そこで技術窃盗があったのです。
どんな事件なのか、本件を報じた韓国メディア『毎日経済』の記事から一部を引用してみます。
(前略)
2008年に『韓国コルマー』に入社したA氏は、9年4カ月間勤務した後、2018年01月に米国移住を理由に退職した。Aは退社1週間後、イタリアの化粧品企業『インターコース』の韓国法人(『インターコースコリア』:引用者注)に転職した。
この過程で、Aは『韓国コルマー』で使用していたノートパソコンにあった日焼け止め技術の主要業務ファイル数百件をグーグルドライブにアップロードする方法で無断で持ち出した。
2007年から2012年まで『韓国コルマー』で勤務していたB氏も、2018年に『インターコスコリア』に入社した後、不正な方法で核心技術の流出を試みた。
『インターコスコリア』は2017年までサンケア製品を製造・販売していなかったが、A氏が入社した2018年以降、サンケア製品を作り始めた。
その年に発生した『インターコスコリア』のサンケア製品関連の売上高だけでも約460億ウォンだ。
また、『インターコスコリア』は、2018年だけでもサンケア関連44件の食品医薬品安全処の審査を完了した。これは異例のことで、奪取した営業秘密を使って製品を作ったというのが裁判所の判断だ。
先の刑事訴訟2審でもA氏とB氏はそれぞれ懲役10カ月の実刑、懲役6カ月に執行猶予2年を宣告された。『インターコスコリア』にも罰金1,000万ウォンが宣告された。
(後略)
恐らく読者の皆さまは、イタリアの『Intercos(インターコス)』をご存じないのではないでしょうか。例えば、『WWD』の記事では以下のように『インターコス』を説明しています。
インターコスは世界の化粧品メーカーに向けて商品の設計や企画提案、受託製造までを行うODM(Original Design Manufacturing)事業を手掛ける世界的企業で、1972年に設立。現在は世界約430社にサービスを提供しており、特にカラーメイクアップやスキンケア分野で支持されている。
現在は欧州や米州、中国、韓国などを中心に世界11カ所に研究拠点を、15カ所に製造拠点を保有しているが、日本での取り引きは行っていなかった。
『インターコス』はODM事業の世界的な大手で、メイク関連・スキンケア分野で支持されています。
つまり、今回判決が出た韓国人は務めていた会社から同業ライバル会社に転職し、元いた会社から盗み出した機密を伝えたわけです。
――で、『インターコス』の韓国法人はその機密を用いた製品でもうけましたとさ――です。
ろくでもない顛末ですが、コネを自分だけで独占したり、技術を盗んだりして他社に転職というのは、韓国ではよくある話です。日本企業も十分に注意しなければなりません。
(吉田ハンチング@dcp)