韓国メディア『毎日経済』に非常に興味深い記事が出ています。韓国銀行法を改正しようという動きがあって、「金融機関により早く資金投入できるようにする」のを目的としている――というのです。
↑「韓国銀行法」/スクリーンキャプチャー/『https://www.law.go.kr/』より
『毎日経済』の記事から一部を以下に引用します。
(前略)
高金利状況が長期化し、家計と企業の費用負担が増える中、『韓国銀行』が非銀行圏の資金支援を強化する内容の韓銀法改正を検討している。昨年の流動性供給に問題が発生したセマウル金庫事件のように、金融機関が突然の危機に直面する状況を事前に防ごうという趣旨だ。
07日、金融界によると、『韓国銀行』はこのような内容を盛り込んだ韓銀法改正を推進することに内部で合意が形成されたことが分かった。
これと関連し、『韓国銀行』は最近、海外主要国の中央銀行の常設融資制度の事例を調査している。
『韓国銀行』の関係者は、「セマウル金庫や相互貯蓄銀行などから急激に資金が流出する場合、迅速に韓銀が融資することが難しいため、常設融資の仕組みを構築する方向に制度を改める必要がある」と話した。
常設融資のためには韓国銀行法(以下韓銀法)を改正する必要がある。
韓銀法の第80条は、金融機関の信用供与が大幅に縮小し、資金調達に重大な問題が発生する可能性が高い場合、金融委員4人以上の賛成で金融業を営む営利企業に融資できる根拠が盛り込まれている。
問題は、韓銀法上の金融機関の範囲が銀行と銀行持株会社に限定されている点だ。
相互貯蓄銀行、農協、信用組合、セマウル金庫をはじめとする非銀行預金取扱機関に迅速に資金を支援するためには、韓銀法を改正しなければならない。
(後略)
「昨年の流動性供給に問題が発生したセマウル金庫事件」というのは、Money1でも以下の先記事でもご紹介しました。
不動産PF(プロジェクトファイナンス)に絡んで「600億ウォン規模の融資債権に問題がある」という話が出たので、『セマウル金庫』の一部支店に、プチBnak Run(バンクラン:取り付け騒ぎ)が発生したのです。
『韓国銀行』の李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は、「『シリコンバレー銀行』のような破綻事態が発生したら韓国は)米国より預金引き出し速度が100倍速いだろう」と語ったことがあります。
韓国の場合には、脆弱な金融機関で大規模な資金流出が起こると、金融機関の破綻がすぐ発生する可能性があります。韓国の金融当局はその芽をいち早く摘まねばなりません。つまり、速やかな資金投入を行うのです。
ところが、現行の韓銀法では、より脆弱な貯蓄銀行やセマウル金庫のような第二金融圏の金融機関には迅速な資金投入が行えないのです。時間を失うと、決定的な事態に至る可能性があります。
いざというときに備えた韓銀法の改正というわけです。
いうまでもないですが、「危険だから」「可能性がある」からこそ韓銀法の改正です。
この『韓国銀行』の動きは、先の『ウリィ貯蓄銀行』の1,000億ウォン規模の有償増資の動きも同じ文脈で語れます。つまり、韓国の不動産PF(プロジェクトファイナンス)問題には、ずっと深刻な裏面があると見なければなりません。
(吉田ハンチング@dcp)