ウォン安が進行しており、韓国の金融当局は阻止に動いています。Money1でもご紹介したことがありますが、該当部局の人間が「1ドル=1,400ウォン」が心理的な抵抗線だとすでに告白していますので(ばかだなあ)、あと10ウォンほどです。
ウォン安の進行を阻止しなければならないので、韓国金融当局もいろいろな手を考えます。
『国民年金公団』と締結した為替スワップ(韓国政府の表記に合わせます)もその一つです。
為替スワップで『国民年金公団』に市場で両替させないようにする
『国民年金公団』は投資家としてはクジラです。ウォンを外貨に換えて外国の資産に投入しますが、クジラ故にこのウォン売り外貨買いが巨額で、市場で行われるとウォン安を進行させてしまいます。
そこで企画財政部は、手持ちのドルと『国民年金公団』のウォンを交換する契約を結んだのです。
2024年06月21日には為替スワップの規模を350億ドルから500億ドルに拡大すると発表しました。
これだけでも大概なもの※なのですが、07月16日、先行調達限度額を「30億ドル」に拡大することを検討している――という話が出ました。
※『国民年金公団』に市場で両替させないという効果はありますが、当然のことながら韓国金融当局の外貨(現金)が減ります。
先行調達限度額の枠を拡大する理由
「先行調達限度額」というのは、投資するときのために「あからじめ外貨を準備しておくことが許された(ウォン ⇒ ドルの)両替できる限度の金額です。
これが現行では「10億ドル」です。
ところが2024年上半期には、『国民年金公団』はウォン売りドル買いを月平均20億~30億ドル行ったことが分かりました。
限度枠10億ドルまでは、安いときに買えるのですが、限度額までいくと、後は必要なときに一気にいくしかありません。これでは市場に大きな影響を与えます。
そこで先行調達限度枠を拡大しよう――という考えが出てくるわけです。
以前にもご紹介したことがありますが、『国民年金公団』は投資規模を大幅に増やしています。
海外資産への投資金額
2019年:256兆8,000億ウォン
2023年:534兆ウォン
2019年末から昨年末で実に2倍以上(約2.08倍)になっています。
『国民年金公団』が買わないから韓国市場で株価が上がらないんだ――という国内投資家からのバカな非難をものともせず、同公団は果敢に外国市場への投資を増やしています。
全運用資産に占める外国資産の規模は、
2019年:34.9%
2023年:51.6%
となりました。賢明な判断だといえるでしょう。1988年~2023年の海外株式の平均収益率は「11.04%」。韓国内株式の平均収益率は「6.53%」しかないのです。
パフォーマンスが1.69倍になるので、韓国の個人投資家が泣こうが喚こうが外国資産に資金投下するのが正解です。
なにせ『国民年金公団』は、基金枯渇の時期が早まる危機にさらされていますので、少しでも多く稼がないといけません。厳冬期が来るのを少しでも先に延ばすためです。
――というわけで、韓国通貨当局としてもできる限り『国民年金公団』にドルを融通してやらないといけないのです。
今回の措置を邪推するなら――為替スワップを使われると外貨準備高が減るのでもう勘弁してくれ、その代わりに「先行調達限度枠」を増やしてやるから、自分の良きところで、自分でドル買いをしてくれ――というものではないのか?とも考えられます。
要するに韓国金融当局に融通できる外貨がないのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)