まず韓国メディア『アジアデイリー』の記事から一部を以下に引用します。
保守寄り勢力から「次期大統領にふさわしい」とされる金文洙
◇『国民の力』支持層から次期大統領候補1位に浮上した金文洙(キム・ムンス)長官
『国民の力』の次期大統領候補を尋ねた質問では、金文洙(キム・ムンス)雇用労働部長官が韓東勳(ハン・ドンフン)前代表と共に11%で1位となった点も注目されている。
特に『国民の力』の支持層だけを対象にすると、金文洙(キム・ムンス)長官の支持率は24%で圧倒的な高さを示した。
以下は主要候補者の支持率である。
金文洙(キム・ムンス)……24%
洪準杓(ホン・ジュンピョ)、呉世勲(オ・セフン)……各17%
韓東勳(ハン・ドンフン)……15%
元喜龍(ウォン・ヒリョン)……9%
羅卿瑗(ナ・ギョンウォン)……4%金文洙(キム・ムンス)長官は最近、閣議で崔相穆(チェ・サンモク)大統領職務代行の憲法裁判官任命に反対するなど、信念ある行動を見せていることが評価されている。
ただし、金文洙(キム・ムンス)長官は与党を離れてから長い時間が経っており、党内での立場が比較的弱いという欠点も指摘されている。
それでも、この結果は彼の豊富な経験や自由民主主義体制の保護に適した人物である点が評価されたものと解釈される。
今回の調査結果は、戒厳事態以降に尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領から離れていた一部の保守層や中道層が再び支持に戻りつつあることを示しており、今後の弾劾政局における大きな分岐点になると見られているのだ。
先にご紹介した、「次期大統領にふさわしくない」調査で李在明(イ・ジェミョン)さんが第1位でした――という『アジアトゥデイ』の記事ですが、実はその下に「次期大統領にふさわしい人物」を聞いたところ――というブロックがあります。
それが上掲した段落です。
金文洙は左派・進歩系とは相容れない存在
↑2024年08月30日、尹錫悦大統領は、金文洙(キム・ムンス)さんを雇用労働部長官に任命。任命状を授けた後の記念撮影。
一般の日本人にはあまり知られていませんが、この金文洙(キム・ムンス)という人は、現在の雇用労働部の部長(長官)です。
韓国では政府機関の長官に就く場合には、国会で人事聴聞会が行われます。左派・進歩系のアンポンタン野党『共に民主党』は、ここぞとばかりに推薦された人物のアラを探しにかかります。
職務停止になった韓悳洙(ハン・ドクス)さんが国務総理になる際、前『国民の力』代表の韓東勳(ハン・ドンフン)さんが法務無長官になる際に、いかにひどい聴聞だったのかは2年余り前にMoney1でもご紹介したとおりです。
左派・進歩系アンポンタンの『共に民主党』ですから、「アラ」というのは特に「親日」について執拗に追求します。
金文洙(キム・ムンス)さんという人は、ゴリゴリの保守寄り、合理的な思考ができ、また信念を貫く人なので、『共に民主党』との相性は最悪です。
「文在寅は銃殺だ」と発言したこともある
2024年08月26日の国会人事聴聞会で、「日帝強占期(日本併合時代)の先祖の国籍は日本」と発言し、物議を醸しました。
また2024年09月03日の国会予算決算特別委員会で、同様の発言を巡り野党議員と激しい論争を繰り広げました。
また、2024年10月10日の国会環境労働委員会の国政監査では、野党議員から過去の発言に対する謝罪を求められましたが、これを拒否。委員会から退場させられる事態となりました。
退場させられることになりましたが、金文洙(キム・ムンス)さんは謝罪も発言の撤回もしませんでした(もっとも自己弁護も行ったのですが)。
金文洙(キム・ムンス)さんは、過去に以下のような発言もしています。
2018年の講演では、当時の文在寅大統領が「建国は1919年」と述べたことに対し、「おかしな話をしている」と批判しました。
2022年10月12日の国会環境労働委員会の国政監査では、「文前大統領は自ら『最も尊敬する韓国の思想家は申栄福(シン・ヨンボク)先生)だ』と言った。申栄福のことを最も尊敬する思想家だと言うなら、確実に金日成主義者だ」と発言。
これは、『共に民主党』議員から「文在寅を主体派だと思うか?」と問われての回答でした。
上掲記事でご紹介したことがありますが、金文洙(キム・ムンス)さんは、2019年の自由韓国党主催の討論会で「文在寅は銃殺対象」と発言したことがあります。
つまり、金文洙(キム・ムンス)さんは、頭の中がお花畑な左派・進歩系の「韓国には臨時政府から連なる正統性がある※」というインチキな史観を全く信じていない、合理的な考え方をする人なのです。
金文洙は筋金入りの活動家だった! 「生ける伝説・金文洙」
左派・進歩系を敵視する金文洙(キム・ムンス)さんですが、実はこの人はもともと運動圏上がりの人です(1951年生まれ)。
しかも筋金入りの労働運動の活動家、非常に戦闘的な活動家で、「운동권의 황태자」(運動圏のプリンス)と呼ばれたほどです。
学生運動を一生懸命行ったため、ソウル大学を二度除籍。勤務した工場では労働運動をして、二度解雇。刑務所にも二度入っているというスゴい経歴の持ち主で、大学を卒業するのに24年6カ月もかかった――という人です。
中国人とは違う、本当の意味で「無敵の人」であり、『共に民主党』の議員など恐れはしない――という猛者中の猛者なのです。
↑2022年10月22日にソウルで行われた保守寄りのデモ集会に参加し、聴衆から歓迎を受ける金文洙(キム・ムンス)さん。YouTube『너만몰라TV』チャンネルの動画。
――というわけで、尹錫悦(ユン・ソギョル)さんが今まさに逮捕されかかっている今、金文洙(キム・ムンス)さんに保守寄り勢力から支持が集まるのも無理はありません。
保守寄りの勢力からすれば「生きる伝説」みたいな人なのですから。
↑2024年08月30日、尹錫悦大統領は、金文洙(キム・ムンス)さんを雇用労働部長官に任命。任命状を授けた後の記念撮影。
(吉田ハンチング@dcp)