アメリカ合衆国との関税交渉がまったく進まず、韓国内では「合衆国に3,500億ドルむしられるくらいなら関税25%のママで良い」という声が高まっています。
その一方で「日本のような無制限の通貨スワップを合衆国に要求」というバカな声も上がっています。
『FRB』(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)が吹けば飛ぶようなローカルカレンシーのウォンとのドル流動性スワップを締結するとはとうてい考えられません。
それはともかく、3,500億ドルなんか絶対出せない――という論拠に「外貨準備高がそもそも4,160億ドルしかない」という言説があります。
外貨準備がこれだけしかない――といっているのは正しいです。

上掲のとおり、2025年08月末時点で、外貨準備高は4,163億ドルです。このうち、
Securities(証券類):3,662億ドル
Deposits(預金):250億ドル
――です。現金たるDeposits(預金)は250億ドルしかありません。
Money1では何度もご紹介しているとおり、Securities(証券類)の中身は謎で、このうち合衆国公債(米国債)は2025年07月時点で「1,325億ドル」あります。

↑アメリカ合衆国財務省が毎月公開している「合衆国公債の主要ホルダーの保有金額」。韓国は黄色のマーカーでフォーカスした金額「1,325億ドル」になります。これは2025年07月末時点、上掲の外貨準備高Securities(証券類)の金額「3,662億ドル」は08月末時点であることに注意してください。
つまり、Securities(証券類)のうちはっきり「正体」が分かっているのは、ほぼ1/3に当たる合衆国公債だけです。
残りは何がいくらあるのかは、公開されていないので分かりません。
韓国のことなので、本当にその金額あるのかは不明です。時価もされていないので、その点でも金額は不明なのです。

――で、ここにきて外貨準備高が「全然足らない」という声が(再び)大きくなっています。
韓国は「適正な外貨準備高」を保有していない!
Money1ではずいぶん前に同様の件をご紹介したことがあるのですが、「外貨準備高が足りない」という声が上がるというのは、またぞろ「外貨が足りない」という嘆息なわけです。
まず韓国メディア『毎日経済』の記事から一部を以下に引きます。
(前略)
日本もまた韓国を圧倒する。5,500億ドルの対米投資を確定させ、自動車関税15%を勝ち取った背景だ。
日本のGDP比外貨準備高比率は昨年末基準で30.6%に達する。
さらに日本は準基軸通貨国※で、すでに米国と無制限通貨スワップを結んでいる。
※韓国ではハードカレンシーをなぜか「基軸通貨」と呼びますが、これは間違っています。基軸通貨は普通「ドル」一択です。ここではなぜか円を「準基軸通貨」などと呼んでいますが、円はハードカレンシーですので、ハードカレンシーを基軸通貨とする韓国なら、円も基軸通貨と呼ばねばなりません。つまり二重の意味で間違っています:引用者注
キム・デジョン『世宗大』経営学部教授は「今からでも金融危機に備え外貨準備高をさらに積み上げるべきだ」とし、「国際機関の勧告基準によれば9,000億ドル以上を備蓄しなければならない」と強調した。
(中略)
専門家によれば、適正外貨準備高を算出するにあたり統一された国際基準はない。
ただし国際通貨基金(IMF)と国際決済銀行(BIS)などが提示した参考指標は存在する。
IMF基準によれば、適正外貨準備高は、
△流動対外債務の30%
△外国人証券投資の15%
△広義通貨(M2)の5%
△財貨輸出の5%――を合算した後、ここに150%を掛けて算出する。
これを昨年末の数値に当てはめると5,220億ドル水準が必要になる。
流動対外債務は韓国銀行が発表していないため、通常は満期1年未満の短期対外債務の1.25倍で推定して計算する。
韓国の外貨準備高は、BIS基準に照らすなら、はるかに及ばない。
BIS基準は、
△3カ月分の輸入代金
△流動対外債務
△外国人証券投資の33%
△居住者外貨預金――などをすべて合算して算出する。
BIS基準によれば韓国の適正外貨準備高は7,053億ドルだ。
キム教授の推定どおりに流動対外債務を短期対外債務の2倍で計算すれば、その規模は8,150億ドルまで増加する。
(後略)⇒参照・引用元:『毎日経済』「한국 외환보유액 8천억 달러 쌓아야하는데, 겨우 절반…외환보유고 손대면 ‘위기’」
久しぶりに登場しましたが、このキム・デジョン先生は、Money1的には有名人です。
すきあらば「韓国の外貨準備高は全然足りない。安全弁として米韓通貨スワップ、日韓通貨スワップを締結せよ」と主張する名物教授です。
これまた久しぶりに『IMF』のARA基準(Assessing Reserve Adequacyの略)を引いて、韓国の外貨準備高は全然足りない――と言い出しました。
まとめると――
『IMF』基準:5,220億ドル
『BIS』基準:8,150億ドル
(キム・デジョン教授補正込み)
――ないといけないのですが、あるのは「4,163億ドル」です。
つまり韓国の外貨準備は、『IMF』基準に照らして「1.25倍」、『BIS』基準なら「1.96倍」にしなければならないのです。
「1.96倍」など、ほぼ2倍です。
そんなこと不可能だってば!
キム教授は、「今からでも金融危機に備え外貨準備高をさらに積み上げるべきだ」などと述べていますが、これこそ不可能です。
Money1では何度もご紹介していますが、韓国は外貨準備を積めなくなっています。
国際収支統計から2025年の「外貨準備の増減」をグラフにすると以下のようになります。

01~07月では累計「-151.6億ドル」です。つまり「今からでも増やす」どころが、減少しているというのが本当のところなのです。
合衆国の「カツアゲ」に韓国はどこまで抵抗できるでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)






