非常に面白い話になってきました。
アメリカ合衆国のトランプ政権から突きつけられた「対米投資3,500億ドルは物理的に不可能。巨額の対米投資を行うためには無制限の通貨スワップが必要」――と韓国政府が居直っている件の続きです。
2025年10月16日、産業通商部の部長(長官)である金正官(キム·ジョングァン)長官さんと大統領室政策室室長の金容範(キム·ヨンボム)さんが、アメリカ合衆国ワシントンD.C.に向けて、仁川空港から出発しました。
米韓関税交渉の続きで、ラトニック商務長官と会談を行う予定です。
――非常に面白いというのは、無制限の通貨スワップに対して合衆国側が難色を示すので、新たなドル調達の迂回路を提案した――というのです。
韓国メディア『毎日経済』の記事から一部を以下に引用してみます。
(前略)
16日、大統領室と政府によると、金容範(キム·ヨンボム)大統領室政策室長、具潤哲(ク・ユンチョル)経済副首相兼企画財政部長官、金正官(キム·ジョングァン)産業通商部長官など、ワシントンD.C.を訪問中の高位級交渉団は、ウォンを基盤として対米投資ファンドのドル資金を合衆国政府から支援を受ける方案
について協議する予定だという。
政府の方案は、『韓国銀行』が合衆国財務省名義の口座を開設し、この口座に韓国政府がウォンを預託すれば、これに相当するドルを米国政府が韓国の対米投資プロジェクトに投入するというのが骨子だ。
これにより、国内外為市場に大きな衝撃を与えることなく、対米投資ファンドの原資を確保できるという利点がある。
これは、両国中央銀行間の協定に基づいて通貨を交換する伝統的な通貨スワップとは異なる概念である。
事実上、対米投資プロジェクトごとに通貨スワップを開設する効果を得られるという見方もある。
例えば、米国内の投資プロジェクトに10億ドルを投入する必要がある場合、政府が1兆4,000億ウォン(現行レート基準)を合衆国財務省の口座に入金する形式である。
(後略)⇒参照・引用元:『毎日経済』「원화 담보로 美가 직접 달러공급 …대미펀드 ‘우회로’ 뚫는다(ウォンを担保に米国が直接ドルを供給…対米ファンドの「迂回路」を切り開く)」
韓国はハードカレンシーなら何でも基軸通貨と呼ぶとのと同じく、なんでも通貨スワップと呼ぶのでややこしいのですが、この記事内で「これが迂回路」としているのは、『FRB』(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)が呼称するところの「ドル流動性スワップ」ではありません。
何度もご紹介してきましたが、「ドル流動性スワップは緊急時のバックストップ」として機能するものであり、「投資の原資にするもの」ではありせんし、「合衆国経済を守るためのもの」であって、吹けば飛ぶようなローカルカレンシー「ウォン」の価値を守るためのものではないのです。
当然のごとく、『FRB』がばかな韓国の要求を容れるわけもなく、合衆国政府側にしても「ドル流動性スワップは連銀の管轄だから」になります。
韓国メディアの報道を見ていると、合衆国がどの程度の難色を示しているかは分かりませんが、門前払いが普通な要求なのです。
ならば――と韓国政府がひねり出した「迂回路」というが、上掲の「合衆国に提案するプラン」とやらだそうです。
❶『韓国銀行』が合衆国財務省名義の口座を開設
❷その口座に韓国側がウォンを入れる
❸入金されたウォンと等価のドルを合衆国が入金
その合衆国財務省名義の口座は『韓国銀行』に作るのか連銀NYに作るのか? 合衆国側が入金するドルはどの国のどの銀行の誰の口座に振り込まれるのか?――など疑問は尽きません。
このような提案を合衆国が飲むかどいうか非常に疑問です。
米韓通貨スワップは進展なし!
一方で、2025年10月16日17時過ぎ、「無制限の通貨スワップ要求については進展なし」という報道が出ました。極左メディア『ハンギョレ』も出していますので信憑性は高いでしょう。
同記事から以下に一部を引用します。
魏聖洛(ウィ・ソンラク)大統領室国家安保室長は、米韓関税交渉において為替市場の不安を緩和するため米国側に要請した通貨スワップ問題に関連して、「進展はない」と16日に述べた。
政府は、合衆国側が要求する3,500億ドル規模の対米投資の前提条件として、無制限の通貨スワップ締結を求めている。
魏室長はこの日、大統領室で記者懇談会を開き、「無制限の通貨スワップを米財務省に提案したことはあるが、現在進展はない状況だ」と述べた。
(中略)
魏室長は「通貨スワップは合衆国財務省との形態では進展がなく、その問題に大きな意味や期待を持っていない」とし、「(対米投資に関して)われわれができる限界と範囲を明らかにし、合衆国と意見を交換する作業が進行中だ」と述べた。
また「上限を設けた通貨スワップについては議論の可能性があるのか」という質問に対しては、
「合衆国財務省とわれわれの間で、無制限であれ限定的であれ(通貨スワップの議論は)ない。進展がないという意味だ」と一蹴した。
(後略)
魏聖洛(ウィ・ソンラク)室長は大統領側近ですからウソはつかないでしょう。
2025年10月16日時点で、無制限だろうが制限付きだろうが、米韓通貨スワップが締結される見込みはない――というわけです。
渡米した皆さんは、明日「何の話」をラトニック商務長官とするのでしょうか。まだ「泣きつく」のでしょうか? それとも上掲の「迂回路」とやらが成立する可能性が高い――と見ているのでしょうか?
(吉田ハンチング@dcp)






