韓国・不動産企業「会社が傾いている」のでハイブリッド債で6,500億調達へ

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韓国では大変に不景気ですが、その原因の一つが不動産会社が大不況なことです。例のPF(プロジェクトファイナンス)問題で、負債ばかり増えて経営が傾き、廃業と倒産が増加しています。

先にご紹介したとおり、『韓国建設政策研究院』が業界リポートで「12年ぶりに到来した極端な不況」と書くくらいです。

韓国の建設業はもう駄目なのか「12年ぶりに到来した極端な不況」
2024年05月07日、韓国の『韓国建設政策研究院』が興味深いリポートを出しました。そもそも業界紙的な「ブリーフィングペーパー」ですが、市場動向の分析として「建設業界は反発可能な景気低下か? 衰退期への突入か? -収益性が低下し、廃業と倒産...

各不動産会社がなんとか凌ごうとしています。有名なのは、事実上破綻して国策銀行『産業銀行』が債権団を取りまとめた『泰栄テヨン建設』です。

企業再生までいかなくても、なんとかあがいている企業もあります。『新世界E&C』もその一つです。


↑『新世界グループ』の本社社屋

『新世界グループ』といえば、2023年末時点で資産規模が韓国第11位。

『新世界百貨店』を中心とする小売業から大きくなりました。現在では知らない人が多いのですが、もともとは『サムスングループ』の企業でした。1997年(アジア通貨危機時)に系列から独立したのです。

――で、『新世界E&C』の経営も傾いています。

2024年第1四半期末時点で同社の負債比率は、なんと807%に達しているのです(負債が自己資本の8.07倍ある)。

もう何度だっていいますが、韓国では負債比率が200%で「危険」と判定されます。

死神『IMF』の勧告が元なのか。なぜ韓国では「負債比率200%超えると危ない」という?
韓国メディアの経済記事で「企業の負債比率」が紹介されることがママあります。韓国メディアでは「負債比率が200%を超えると危ない」と判断されることが多いのです。負債比率は、負債を自己資本で割って計算します。つまり、負債が自己資本の何倍あるのか...

この「200%」という判断基準は、1997年のアジア通貨危機時に設けられたハードルに由来すると考えられますが、この基準からいっても『新世界E&C』は危ないどころではありません。

ハイブリッド債発行して「6,500億ウォン」調達だ!

そこで同社は資金注入を行うことにしました。

ハイブリッド債を発行して6,500億ウォンを調達し、自己資本を積み増しして負債比率を圧縮するつもりです。

韓国メディア『THE KOREA ECONOMIC DAILY』は、

「韓国の小売大手、『新世界グループ』の建築部門は、現地の不動産プロジェクトファイナンス部門で苦境に立たされているが、ハイブリッド債を通じて6,500億ウォン(4億7,800万ドル)を調達し、企業の自己資本を増やして負債を現在の4分の1以下に減らす予定だ」

と書いています。

「ん? 債券を発行してお金を調達しても、それって負債になるんじゃないの?」と思われた方は、核心を突いています。だからこそ「ハイブリッド債」を使うのです。

このハイブリッド債というのは、その名のとおり、株式と債券を複合化した証券で、株式と同様に資本にカウントする(組み入れる)ことが認められています。

そのため、ハイブリッド債を発行して調達する6,500億ウォンを「資本」とカウントでき、負債が全然減らなくても、その分負債比率を圧縮することができる――というからくりです。

ただし、ハイブリッド債は「劣後債」であって、何かあったときに回収できる可能性が低いものです。そのため、利率が高くなります。つまり、『新世界E&C』は高利と引き換えに資金を入れてもらうことになるのです。

また傑作なのは、負債比率が目論見どおり「200%」に圧縮でき、200%になったとしても、韓国の基準からすればそれでも「危ない企業」である点です。

――韓国の不動産会社はそれぞれに苦境に陥ってるというわけです。

(吉田ハンチング@dcp)

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