先にご紹介したとおり、2023年07月13日、韓国の金融通貨当局は基準金利を「3.50%」に据え置きました。
4回連続の金利据え置きでした。
この後、アメリカ合衆国・『FOMC』(Federal Open Market Committeeの略:連邦公開市場委員会)が政策金利を0.25%上げて「5.25~5.50%」としました。
政策金利
アメリカ合衆国:5.25~5.50%
韓国:3.50%
※政策金利を基準金利は同義ですが、韓国では「基準金利」という言葉を使っています。
予測どおり、これで合衆国と韓国の金利差は、史上最大の2.00%にまで拡大しました。
あまりに金利差が大きくなると、資金流出が懸念されます。
しかし、韓国の金融通貨委員会は大規模な資金流出は起こらないと読んだ上で据え置きに踏み切っています。もちろん、Money1でも何度もご紹介しているとおり、韓国は現在金利を上昇できるような状況ではない、ことも据え置いた大きな理由ではありますが。
ただし、金利差が拡大したことでショックに脆弱になったことは確かです。
韓国メディア『中央日報』が面白い記事を出していますので、以下に一部を引用してみます。
米韓の金利差が史上初めて2%ポイントに拡大した。
合衆国連邦準備制度(FRB)が26日(現地時間)、基準金利を0.25%ポイント引き上げるベビーステップを実施したことで、米韓の金利差は史上最大水準の2%ポイントに拡大した。
米韓金利の逆転が直ちに為替・金融危機を引き起こすわけではないが、市場では「09月危機説」が再燃している。
(中略)
幸い、現在までは金利の逆転が深刻な悪材料になることはなかった。
05月に1,340ウォン台まで下落したウォンの価値は、現在1,270ウォン~1,280ウォン台まで上昇した。
資本フローも安定している。05月(114億3,000万ドル)、06月(29億2,000万ドル)共に資金流入の方が多かった。
しかし、米韓の金利差2%ポイントというのは、過去に一度も経験したことのない状況だ。
特に、『韓国銀行』が半年近く基準金利を3.50%に据え置いた間、融資規模と延滞率が急速に増加し、借金爆弾に対する懸念が高まっている。
現在、債務爆弾の影響で『韓国銀行』は簡単に金利を引き上げることもできない状況だが、一方で、金利が縛られている間に債務がさらに増え、健全性が悪化する「金利の罠」に陥っていることになる。
市場で「09月危機説」が流れているのもこのためだ。
(後略)
概ね正鵠を射ています。政府・企業・家計の3部門共に負債が積み上がっており、第2金融圏の『セマウル金庫』ではプチ取り付け騒ぎが起こったりしていますので、金利は上げられません。
記事内にもあるとおり、借金爆弾に点火する可能性があり、また不景気に沈む企業の資金調達にも悪影響が及ぼすからです。
幸いなことに、合衆国の金利上昇はもうないだろうと見られていますので※、ここを耐えられれば……という状況です。韓国の通貨当局が「薄氷を踏む思い」なのは変わりません。
※ただし連銀は「2023年中に5.75%までいくかもしれない」とはしています。連銀がまた0.25%上げたときに、韓国が上げずに我慢できるかは相当な見ものです。李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁の読みと胆力が試されることになるでしょう。
「金利の罠」というかどうかはともかくとして、韓国が忍の一字で火消しのパッチワークに励まなければならなくなっているのは確かです。
以下の記事でご紹介した「『韓国銀行』のウォーミングアップ開始」もそうですが、とにかく火の手が上がったらボヤのうちに消火するのが肝要です。
(吉田ハンチング@dcp)