韓国では電気インフラが足りていません。先にご紹介したとおり、送電網が整っていないため、新規に完成した火力発電所が「電気を生産しても無駄だ」と運転を行っていないくらいです。
「ばっかじゃなかろか」――という話なのですが、実はこの「送電網不足解消」の問題は、今に始まったことではないのです。
古参の韓国ウォッチャーからすれば「まだやってんの?」なのです。
「人のせいばかりにする韓国」「取れるものは全部とろう」
2016年に刊行された『韓国はなぜ危険か』という本があります。同書は、もともと『韓国経済』が韓国で刊行した『大韓民国未来レポート』の翻訳版です。
元本の『大韓民国未来レポート』は、大手メディア『韓国経済』が「自国の将来が危うい」として、そのポイントを列挙した点に価値があります。改革しなければならない点として、
①後退する国会と政府
②冷めゆく成長エンジン
③若者を泣かせる労組
④北朝鮮の核より恐ろしい少子化
⑤創意にあふれる人材を育成できない教育
⑥人のせいにばかりする大韓民国
を挙げています。スグにお分かりになるでしょうが、今と何も変わりません。
「人のせいばかりにする韓国」について書いた第8章に「無理強いを助長する市民団体」という項があります。
この中で「取れるものは全部とろう」という韓国人の態度がいかに弊害をもたらしているかの例に、いつまでたっても送電網が整備されないことを挙げているのです。
該当箇所を以下に引用してみます。
(前略)
2015年8月31日、京畿道平澤市庁の前には赤い鉢巻を巻いた龍仁市民700人あまりが押し寄せて警察とにらみ合った。前列には「平澤市庁は立ち去れ」というたすきをかけたチョン・チャンミ龍仁市長がいた。龍仁の一部地域を通過する高圧送電線設置反対のための集会だった。
韓国電力は新設予定のサムスン電子・平澤半導体工場に電気を供給するため、17キロにわたって高圧送電線を設置することにしたが、送電線が龍仁と安城の一部地域を通るように設計されたことが対立の原因になった。
7月には安城市民1000人あまりが、全羅南道羅州の韓国電力本社前でデモを繰り広げたりもした。
送電線をめぐる平澤と安城、龍仁地域の対立は、解決の糸口が見えていない。その影響で15万人あまりの雇用を創出すると期待されるサムスン電子・平澤工場建設事業は、とめどなく遅れている。
(後略)⇒参照・引用元:『韓国はなぜ危険か』著:韓国経済新聞/訳:豊浦潤一,中央公論社,2016年06月10日発行,p191
この2016年の本で書かれている、『サムスン電子』平澤キャンパスまで通す送電線が竣工したのは、驚くなかれ「つい最近」2023年09月のことです。
変電設備、送電線の計画が立ち上がったのは2013年08月ですから、なんと10年もかかったのです(送電線の竣工予定が2021年06月とされたのでそれだけ考えると2年遅れ)。
地域住民を巻き込んだ市民団体との猛烈なドつき合いとなり、時間を失いました。また、この総延長23.5kmの送電線、変電設備の全建設費と争議和解の費用など計3,900億ウォンは全部『サムスン電子』の持ち出しとなりました。
『サムスン電子』が「もうアメリカ合衆国の企業になっちゃおうかな」と考えても無理はありません。同書では、どうしようもない韓国の民度(そうとしかいえません)について、以下のように嘆いています。
※もともと同書は韓国メディア・韓国人が書いたものであることに再度注意してください。
(前略)
地域の利己主義と、人々を動員して自分たちの主張を貫こうとする「集団無理強い法」は韓国の未来を暗くしている一因だ。地域に不利益になると判断されれば、官民を問わず、とりあえず反対してみる。
「取れるものはできるだけ取る」という心理が働いているという指摘だ。
このため、各企業が推進する事業が遅滞するケースが日常茶飯事だ。
理念しか見えなくなっている市民団体が加勢すれば、対立は手の施しようがなくなる。
(中略)
2010年に9603だった市民団体数は14年には1万2252に増えた。毎年約500団体ずつ増えていることになる。
(後略)⇒参照・引用元:『韓国はなぜ危険か』著:韓国経済新聞/訳:豊浦潤一,中央公論社,2016年06月10日発行,p192
2016年に書かれた本ですが、約8年たった現在、韓国はいい方向に進んだのでしょうか。
繰り返し付記しますが筆者の意見ではありません。韓国のメディア自身が指摘してきいるところです。
(吉田ハンチング@dcp)