韓国では2022年度の最低賃金を巡る前哨戦が始まっています。
最低賃金は韓国政府が主催する「最低賃金委員会」で話し合われます。この会議では労働組合の代表(労働者委員)と経営側(経営者委員)の代表が丁々発止のやり取りを行い、政府側も調停に入り、最終的な金額(時給)が決定されます。
ちなみに2020年に行われた「2021年度の最低賃金」を決める最終会議は07月13日に行われ、なんとか朝までかからずに終わりました(下馬評では徹夜で討論が続き翌14日に決定でした)。
韓国の最低賃金は上掲のとおり推移しており、文在寅大統領が就任(2017年)してから「35%」上昇しました。
文大統領の公約は「最低賃金1万ウォン」(約980円)でしたから、任期内に公約を達成するためには今回の最低賃金委員会は最後の機会です。
労組側「1万800ウォン」を要求!
2021年06月25日の韓国メディア『亜州経済(日本語版)』によると、24日労働者委員は記者会見を開き、要求金額を開示しました。
「来年度の最低賃金の最初の要求案を1万800ウォンで提出する計画だ」
「1万800ウォン」は、日本円では「1,054円」です(ウォン円換算は2021年06月25日「1ウォン=0.098円」)。
現在の「8,720ウォン」からなんと「23.9%アップ」です。
日本で最も高い東京都の最低時給は現在「1,013円」ですので、もしこれが通ると韓国の最低時給は日本を上回ることになります。
⇒データ引用元:『日本国 厚生労働省』公式サイト「地域別最低賃金の全国一覧」
最大50万人分の雇用が消失する可能性
最低時給を上げると、多くの雇用が失われる可能性があります。その時給を出せない使用者が雇用を切るからです。
どのくらいの雇用が失われるかは、先にご紹介したとおり、あの『全国経済人連合会』がリポートを公表しています。以下が上昇幅別に見た雇用喪失規模の推計です。
2022年(最低賃金別シナリオ)
⇒9,156ウォン( 5%up):-4.3 ~ -10.4万人
⇒9,592ウォン(10%up):-8.5 ~ -20.7万人
⇒1万ウォン(14.68%up):-12.5 ~ -30.4万人
⇒1万28ウォン(15%up):-12.8 ~ -31.1万人
⇒1万464ウォン(20%up):-17.1 ~ -41.4万人
⇒1万900ウォン(25%up):-21.3 ~ -51.8万人
「1万800ウォン」ぴったりのシナリオはありませんが、「25%アップ」の「1万900ウォン」を近似値とすると、「21.3~51.8万人」分の雇用が失われる可能性があります。
もちろん行ってみないと正確な影響は計測できませんが、しかし賃金には下方硬直性があります。つまり、いったん上げたら下げることが困難なのです。
もし本当に1万ウォンを突破し雇用の喪失が多く、「やっぱり元に戻そう」としてもそう簡単にはいかないということです。取り返しのつかない決定になる可能性があるのです。
韓国の2022年度の最低賃金がどのように決まるかは、将来の韓国経済に大きな影響を与えるのではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)