先の記事で合計特殊出生率が世界最悪の「0.84」になっているので、韓国の老齢年金のシステムは危ないと書いたのですが、2021年06月23日に韓国メディア『中央日報(日本語版)』に「『韓国の国民年金は事実上の詐欺』…次期年金学会長が衝撃の暴露」という扇情的なタイトルの記事が出ていました。
見逃すのは惜しい記事ですのでご紹介します。
年金の基金の枯渇が見えている
これは、次期『韓国年金学会』会長の李昌洙(イ・チャンス)崇実大教授(情報統計保険数理学科)の発言・論考を紹介した記事です。
そもそもの前提として、2018年に政府が国民年金の財政見直しを行った際に、出生率を1.24~1.38と仮定しましたが、現実には2020年の段階で合計特殊出生率は「0.84」。2021年には「0.7台」に下落するのが確実視されています。
この合計特殊出生率は短期間で戻ったりしません(よほどのことがない限り)。ですので、そもそも仮定が間違っていたわけなので、このまま進んでいいわけないのです。
記事から一部を引用します。
李教授は「出生率を1.05人(2017年)としても生産可能人口1人が高齢者を1人以上(1.05人)扶養しなければいけないが、現実的に可能だろうか」と憂慮した。
出生率を1.05人と仮定しても基金減少時期(2057年)の赤字は124兆ウォン(約12兆円)から239兆ウォンに増える。
基金運用収益率が0.5%ポイント低下すれば2055年に、1%ポイント低下すれば2053年に基金が枯渇するという。
(後略)
教授は「1.05人」で計算した結果を示されていますが、これを「1.0人」を切った数字で計算すればもっと結果は悪くなるはずです。
李教授は「現在の年金制度は一種のポンジ・スキーム(出資金詐欺)のようで、後世代にずっと負担を転嫁する」(同記事より)と指摘していらっしゃいます。
「低福祉・高負担」には転換できない!
現年金学会会長のユン・ソクミョン先生の指摘は辛辣です。記事から一部を引用します。
(前略)「主な政策決定者がカルテルを形成して情報を遮断している。人口構造が世界で最も良くないが、(年金改革は)最も遅く進んでいる」
(中略)
「財政当局が公務員・軍人年金の国家負債(を少なく見せようと)推計をごまかしている」
「国民年金も未積立負債が1,500兆ウォン(国民1人あたり289万ウォン)にのぼるが、国家負債に含めていない」
「ギリシャよりも深刻だ。出生率(0.84人)反騰の可能性が低いが、税金で年金を給付すればばよい(賦課方式)という」
「この場合、高い税金のため青年の脱韓国ラッシュが予想される。中国や日本で3D(Difficult、Dirty、Danger:いわゆる3K/筆者注)業種の仕事をする可能性が高いが、そうなれば国が滅びる」
(後略)
韓国政府は、国民年金財政の破綻に対して税金で給付すればいいとしているが、そんなことをすれば税金を上げざるを得ず、そうなると韓国の若者は高い税金に辟易して海外に脱出するだろう。これは国を滅ぼすことだ――と指摘していらっしゃいます。
先にMoney1でもご紹介したとおり、韓国は「低負担、低福祉」でこれまでやってきました。しかし、低福祉も保障できなくなった場合、高負担に転換したとして韓国民がそれを許容するだろうか?という問いです。
(吉田ハンチング@dcp)