大統領の「国家的緊急事態宣言」(非常事態宣言)とは?

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メキシコ国境に建設する「壁」の問題で民主党との合意ができないトランプ大統領ですが、「非常事態宣言」(国家的緊急事態宣言)を行い、非常時に持つことが許される「大統領の大権」を使ってでも強行突破しようとしています。

国際政治・合衆国政治外交論の専門家で筑波学院大学名誉教授の浅川公紀先生によれば、合衆国大統領の持つ「非常時の大権」とは以下のようなものです。

<<引用 ここから>>

大統領は国家緊急事態宣言により、約470の緊急事態法令の一部あるいは全部を発動し、市民の政治的、経済的自由を制限することになる。大統領は、個人を規制し、資産を管理・規制し、通信を規制する権限を持つ。

個人を規制する権限には、国家の安全に脅威になりうる個人の拘禁、海外から米国への行き来の制限、米市民権付与の制限、米国内での移動の制限、個人の米政府への登録義務付け、個人の重要産業での雇用の制限、連邦職員解雇の権限、人身保護令の停止、戒厳令の発令、軍隊の海外派兵などが含まれる。資産管理・規制の権限には、特定戦略物資備蓄命令、米国製品輸出規制、国防のための物資配分、産業に対する政府契約優先義務付け、賃金・価格の設定などの権限が含まれる。通信規制の権限には、国家安全保障を損ないうる情報の議会への開示拒否、規制の連邦公報での公表停止、米国と外国との交信の検閲、外国の宣伝を行う者の登録義務付けなどの権限が含まれる。

⇒引用元:浅川公紀『米大統領職と緊急事態権限』
https://www.musashino-u.ac.jp/albums/abm.php?f=abm00004720.pdf&n=02_asakawa.pdf

<<引用ここまで>>

浅川先生によれば、これまでに行われた非常事態宣言で最も強力な力を行使できたのは、2001年「9.11」の際のブッシュ大統領です。同時多発テロが起こったことでブッシュ大統領の支持率は90%に上昇し、国民はテロへの報復のために大統領への強大な権力集中を許しました。後に問題視される「アメリカ合衆国愛国者法」(USA PATRIOT Act)の制定もこの時(2001年10月26日大統領署名)でしたね。

仮にトランプ大統領が壁問題について「非常事態を宣言」した場合、民主党が「異議を申し立てる」ことが予想されています。大統領の行動や非常事態に対する措置が合法的かどうかは連邦最高裁判所によって最終判断が下されるようになっています。民主党が異議を申し立て、これで揉めると司法の最高位の判断によって合法・違法の結論が出るでしょう。

日本人からすれば、そもそも「壁問題で大統領が非常事態を宣言できるかどうか」が問われるべきでは?などと思いますが……。

(柏ケミカル@dcp)

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