2021年11月05日、『韓国銀行』が09月の国際収支統計を公表しました。当月は少しばかり異常な感じになっています。
2021年11月経常収支
貿易収支:94億5,420万ドル(約1兆723億円)
サービス収支:-2,300万ドル(約-26億円)
第1次所得収支:7億5,100万ドル(約852億円)
第2次所得収支:-1億1,450万ドル(約-130億円)
経常収支(上記4つの合計):100億6,770万ドル(約1兆1,419億円)⇒参照・引用元:『韓国銀行』公式サイト「2021年9月国際収支統計(暫定)」
まず、経常収支全体ですが「100億ドル」を超えています。これは非常にもうかったということです。
経常収支が100億ドルを超えたのは2021年05月の「107億6,120万ドル」(約1兆2,205億円)以来のこと。
その前は「2020年12月:115億710万ドル」(約1兆3,051億円)「2020年10月:115億5,120万ドル」(約1兆3,101億円)「2020年09月:103億3,530万ドル」(約1兆1,722億円)です。
その前となると「2018年09月:112億3,550万ドル」(約1兆2,743億円)まで遡(さかのぼ)らないと見当たりません。
つまり、韓国の経常収支が100億ドルを超えるのはあまりないことなのですが、2021年09月は100億ドルを超えました。2020年は不況型黒字だったのですが、2021年に入って、これで2回目の100億ドル超えです。
貿易収支が「94.5億ドル」を達成できたのは……
この100億ドル超えを実現できたのは、まず貿易収支が「94億5,420万ドル」(約1兆723億円)と巨額黒字だったことによります。
以下が貿易収支の詳細です。
輸出:564億3,840万ドル(約6兆4,012億円)
輸入:469億8,420万ドル(約5兆3,290億円)
貿易収支(輸出 – 輸入):94億5,420万ドル(約1兆723億円)
貿易収支がこれほど巨額なのは輸入金額が小さいからです。これは、産業通商資源部が発表した「通関ベース」での輸出・輸入・貿易収支と大きくずれています。
産業通商資源部が公表した輸出・輸入・貿易収支のデータと、国際収支統計を比較すると以下のようになるのです。
通関ベース | 国際収支統計 | 差※/% | |
輸出 | 558.3億ドル | 564.4億ドル | +6.1億ドル/1.1% |
輸入 | 516.2億ドル | 469.8億ドル | -46.4億ドル/-9.9% |
貿易収支(輸出 – 輸入) | 42.1億ドル | 94.5億ドル | +52.4億ドル/55.4% |
※差は「国際収支統計 – 通関ベース」で計算。「%」は差を国際収支統計の金額で割ったもの(× 100)です。
産業通商資源部が公表した通関ベースの数字では、貿易収支は「42.1億ドル」でした。これが国際収支統計では「94.5億ドル」に膨らんでいます。
その原因は、上掲のとおり国際収支統計では、通関ベースより輸入金額が約10%も下になったためです。そのため、通関ベースの数字よりも52億ドルも貿易収支が大きくなったのです(それだけもうかったことになった)。
数字がブレるのは先にご紹介したとおり、輸出入の金額をどのように計上するかの差によって生じます※。簡単にいえば、国際収支統計では、輸入について「運賃・保険料」を除いた金額で計上します。この差は徐々に大きくなっています。つまり運賃・保険料が高額になっていることを示しています。
サービス収支の赤字が少なく、第1次所得収支も急ブレーキ
今回の09月の国際収支統計が面白いのは、韓国の常になくサービス収支の赤字がわずか「2,300万ドル」で済んでいる点です。これはコロナ禍の影響を受けて人の移動が制限されるなど、海外のサービスを使わないでいるためだと推測されます。
コロナ前の2019年、韓国のサービス収支は月平均「-22億3,710万ドル」でしたから、当月は赤字が二桁少ないのです。
さらに、第1次所得収支の黒字がわずか「7億5,100万ドル」しかありません。2021年のこれまでの数字からいえば異常に少ない数字です(残酷な04月を除く)。
第1次所得収支は、海外に投資したアガリを計上するなどの項目ですが、前月08月には「11億1,250万ドル」ありました。2021年01~08月の平均が「19億6,750万ドル」ですから、いかに急減したかがお分かりいただけるでしょう。
総じていえば、2021年09月の韓国の経常収支は、貿易収支の巨額黒字もそうですが、少しばかりヘンなきしみが見て取れる内容となっています。
実は対前年同期では経常収支は微妙に減少
最後になりますが「良かった」かというと、「うーん……」なのです。確かに経常収支は「100億ドル」を超えて「もうかった」なのですが、
2020年09月:103億3,530万ドル(約1兆1,722億円)
2021年09月:100億6,770万ドル(約1兆1,419億円)
小計:-2億6,760万ドル(約-303.5億円)
上掲のとおり、前年同期で比較すると実はもうけは減っているのです。もちろんわずかではありますが。
(吉田ハンチング@dcp)
※貿易統計(関税庁・産業通商資源部)と国際収支統計では以下のように輸出入の金額を計上します。
輸出:FOB価格
輸入:FOB価格
貿易統計(関税庁・産業通商資源部)
輸出:FOB価格
輸入:CIF価格
FOBは「Free On Board」
CIFは「Cost,Insurance and Freigt」
FOB価格、CIF価格には以下の違いがあります。
CIF価格:運賃・保険料込みの価格
関税庁・産業通商資源部の公表する貿易統計の「輸入金額」は物品の輸入についての「運賃・保険料込み」であり、国際収支統計ではこれを除いたFOB価格で計上します。