韓国に尹錫悦(ユン・ソギョル)新政権ができてから2カ月たっていませんが、文在寅前大統領の功績があまりにも素晴らしいために、その負の遺産をひっくり返すのに苦労しています。
コロナ禍があったとはいえ、韓国は文在寅前大統領の任期中から経済には暗雲が漂っていました。
ロシアが無法に起こしたウクライナ戦争によって経済が傾いた印象がありますが、以下のように2019年にすでに韓国は経常収支が右肩下がりで落ち込んでいます。
つまり、コロナのせいにもロシアのせいにもできません。
2020年、2021年の経常収支は増えているとおっしゃるかもしれませんが、実は皮肉なことに、これこそがコロナ禍の効果なのです。誠に申し訳ありませんが、長くなりますのでこれについては別記事にしてご紹介するようにいたします。
ともあれ、韓国の経済は現在困った状況になっています。
前大統領の経済施策のせいで次の大統領が苦慮するという状況は、1997年のアジア通貨危機を思い起こさせます。
1997年は金泳三(キム・ヨンサム)大統領の政権末期で、次期大統領の選挙が行われるその直前に韓国は事実上のデフォルトに陥り、『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)からの支援を受けました。
非常に興味深いのは、金泳三(キム・ヨンサム)大統領は寸前まで状況を把握していなかったことです。そのため政府閣僚が「韓国のファンダメンタルズは健全」などと放言し、後で世界的に恥をかくという事態にまでなりました。
官僚・スタッフの皆さんは「誰が大統領に知らせますか?」という気持ちだったのかもしれません。
韓国が『IMF』に要請するまでの状況の変化
そもそも1997年は初頭から不穏な空気が漂っていました。対外債務を異常なほど積み上げたという背景があります。『IMF』が到着するまでの経緯は以下のようになります。
1997年01月22日
韓国政府が金融産業改革委員会が発足01月23日
財界序列第14位『韓宝鉄鋼』が破綻巨額の焦げ付きが発生した『第一銀行』はじめ金融機関が経営難に。そのため銀行圏が不良融資の回収に躍起になる。
30大企業のうち『三美』『真露』『農心』が相次いで破綻。
07月
『起亜自動車』の経営難が表面化10月
資金難で『ヘテ』『ニューコア』『ハルラ』が倒産。
焦げ付いた銀行貸し出しが「33兆ウォン」を超える。『Moody’s』『S&P』信用格付け会社が韓国、銀行の信用格付けを引き下げる。
海外メディアで韓国経済に不信感を抱く記事が多くなる。
11月
韓国閣僚が「韓国のファンダメンタルズは健全である」と海外メディアに反論海外メディアから「ファンダンメンタルズの健全な国の経常収支がなぜ赤字になるんだ」と反論。国際的に恥をかく。
11月中旬
金泳三(キム・ヨンサム)大統領に通貨危機的状況を報告11月17日
手持ちのドルが尽きた『韓国銀行』は通貨防衛を放棄11月21日
韓国から『IMF』に緊急支援要請11月23日
『IMF』協議団がソウル入り12月18日
大統領選挙投票日
金大中(キム・デジュン)の当選が決まる
事実上のデフォルトになった時によくまあ大統領選挙が行われたものですが、このときに面白いエピソードがあるのです。
『IMF』は、金泳三(キム・ヨンサム)大統領の他、大統領候補の3人、金大中(キム・デジュン)、李会昌、李仁済からも「当選後には『IMF』との協約を順守する」という誓約書にサインさせているのです。
つまり誰が当選しても『IMF』との約束を守らざるを得なくなったのです。
当選した金大中(キム・デジュン)さんは、大統領になってから「表に出ているよりも韓国経済の状況がずっと悪いこと」を知ることになるのです。
金泳三(キム・ヨンサム)さん自身も驚いたでしょうが、大統領がぎりぎりまで本当のことを知らされていないというのは……いかがなものかです。
このような過去があったので、識者の皆さんは、韓国政府の「大丈夫!」には懐疑的な態度を取るのでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)