韓国が「補助金を出さないと工場を造らないぞ」と米国を脅す

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「Trick or Treat」(お菓子をくれなきゃイタズラするぞ)は、ハロウィンの際に子供が家々を回って言うセリフです。

韓国政府が似たようなことを言い出しています。

事の起こりは2022年08月16日に成立した「インフレ抑制法」(Inflation Reduction Act:IRA)です。

インフレ抑制法によれば、EV(電気自動車)購入時には1台当たり最大で7,500ドルの税額控除が得られると規定しています。

ただし、このような恩恵を受けられるのは「最終組立が北米(合衆国・カナダ・メキシコ)で行われている車種のみ」です※1

このインフレ抑制法に基づき、合衆国エネルギー省は「北米で最終組立を行っている(可能性が高い)と認める車両のリスト」を公表しました※2。これらの自動車は税額控除を受けることが可能です。

同省が公開したリストを以下に引用してみます。

⇒参照・引用元:『アメリカ合衆国 エネルギー省』公式サイト「Inflation Reduction Act of 2022」/スクリーンショット

日本車は「日産リーフ」の2022年、2023年モデルが入っています。

税額控除が得られる分安く購入できますから、このリストに入った車種は他の自動車に比べて価格戦闘力が増し、販売競争で有利ということになります。同法は2022年08月17日以降有効です。

インフレ抑制法は韓国に大きな衝撃を与えました。

韓国『現代重工業』『起亜自動車』が販売している電気自動車5モデルは全部リストに入りませんでした。

※1
控除対象となるのは「北米で組み立てられ、かつバッテリー資材あるいは部品を米国・自由貿易協定(FTA)を結んだ国で一定比率以上調達した電気自動車」です。まずは北米で最終組立を行った電気自動車ですが、EV税額控除の対象となる要件については、他にバッテリー材料に含まれる重要鉱物、部品の生産・組み立てに関する調達先の価格割合などがあります。これらは2023年01月01日以降に購入、あるいは契約される車両から適用されます。

※2
同じモデルでも複数の場所で生産されているケースがあるので確定的な生産地を調べる方法として車体固有識別番号(VIN番号)から検索できるサイトを紹介しています。

韓国産電気自動車「危うし」!

韓国自動車企業は「電気自動車で他国企業よりも優位に立っている」と誇ってきました。実際、『現代重工業』『起亜自動車』は電気自動車において北米市場で業績を伸ばしてきたのです。

しかし、今回のインフレ抑制法によって「韓国産」の電気自動車は価格戦闘力を喪失することになります。

同法に対しては、韓国製自動車を売れなくするものだとして、韓国内で反発が高まっているのです。

世界最大の自動車市場・中国でシェアがゼロに近づいている韓国自動車企業にとって、北米市場でシェアが低下することは死活問題ですので反発するのは当然といえます。

韓国与党『共に民主党』の権性東(クォン・ソンドン)院内代表は次のように述べています。

「(インフレ抑制法は)米韓FTAと衝突する可能性が非常に高い」

FTAの原則上、韓国産電気自動車は北米地域生産品と同等の税制給付を受けなければならない」

合衆国の税制差別措置は米韓両国の経済・安保同盟強化精神に合わない

「韓国産電気自動車を北米産と同等に扱うよう政府は合衆国政府との交渉に直ちに着手せよ

インフレ抑制法は、合衆国と韓国が締結しているFTA(自由貿易協定)に反すると指摘しています。これは、外国産の製品も内国産の製品と同等の扱いをすること、という原則のことをいっています。GATT-WTOでも同じで、自由貿易における大原則ともいえます。

今回のインフレ抑制法では、税額控除を受けられるのは(まず)最終組立が北米で行われたEVのみ、と規定していますので、これは差別的な扱いだというのです。

韓国メディア『朝鮮日報』には以下ような報道が出ています。

(前略)
金振杓(キム・ジンピョ)国会議長は、フィリップ・ゴールドバーグ駐韓米国大使に会った席で「韓国の電気自動車企業がインフレ削減法の恩恵を受けにくい状況」とし「こうなると『現代自動車』など韓国企業が米韓首脳会談当時、バイデン大統領に約束した大規模対米投資が遅れる可能性がある」とゴールドバーグ大使を圧迫した。
(後略)

⇒参照・引用元:『朝鮮日報』「정부 “美 전기차 보조금 중단은 FTA 위반”… 여야도 결의안 추진」

インフレ抑制法では韓国企業が恩恵を受けられず、このままではバイデン大統領に約束した対米投資が遅れるぞ――と述べたことになっています。

つまり、「補助金をくれなきゃ工場を造らないぞ」と合衆国を脅したわけです。

しかし、この脅迫はおかしな話です。

最終組立を行う工場を北米に造った方が税額控除を受けられるので、対米投資を猛スピードで進めた方がお得なのではないでしょうか。

もちろん韓国から合衆国への完成自動車の輸出は減少するでしょうが、それは投資を表明した時点で分かっていた話のはずです。いわれたゴールドバーグ大使も「?」となったのではないでしょうか。

韓国政府が合衆国と交渉を行うのか、また交渉の結果がどうなるのかにご注目ください。

(吉田ハンチング@dcp)

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