韓国では物流大乱が続いています。
『民主労総公共運輸労組貨物連帯本部』(貨物連帯)の無期限ストライキ突入によって、(加盟しているドライバーが運転する)陸上輸送の要であるトラック・トレーラーなどが止まりました。
Money1でもご紹介したとおり、2022年11月29日、韓国政府は「業務開始命令」の発動に踏み切りましたが、それでどうなったかというと……変わりませんでした。
『民主労総』は猛反発で闘争強度を強める宣言!
セメントが来ないので建築現場が麻痺寸前になっており、これを重く見た国土交通部はセメントバルクトレーラー(CBT)に対して業務開始命令を出したのですが、そんなものどこ吹く風と、11月30日、セメント貨物連帯は集会を開いて業務開始命令撤回を要求。
↑2022年11月30日の動向を報じる『YTN』のニュース映像。YouTube『YTN』チャンネル
↑韓国のストライキといえばコレ――という断髪式もやっぱり行っています/上掲動画よりスクリーンショット
尹錫悦(ユン・ソギョル)政府による業務開始命令の下命、また「法的に断固として対処する」という姿勢に組合側は猛反発。
真っ向勝負の姿勢です。
セメント貨物連帯による「業務開始命令の断固拒否」だけではなく、上級組織である『民主労総』は、関連下部組織も巻き込んだ「総ストライキ」を2022年12月06日に行う――と予告。
「反憲法的な業務開始命令が撤回されなければ闘争の強度を強める」とも述べています。
また、本日12月01日には大統領室が入っている龍山前で「ストライキ支援市民社会文化祭」を開催し、その後、06日にはソウルと釜山で「全国労働者大会」を行うとも。
この声明どおりになるのなら、来る06日は総ストライキと全国労働者大会の同時開催です。
『貨物連帯』本部仁川支会のパク・スヒョクさんは、「安全運賃制度は貨物労働者の唯一の盾であり武器である。安全運賃制がなければ、私たちは再び奴隷の生活に戻らなければならない」と、そうかなぁ?という主張を行っています。
なぜ「そうかなぁ?」かというと、今回争点になっている「安全運賃制度」の施行前と施行後で事故が減ったのかなどの調査を行った結果がありまして、有意に「効果があった」とはいいにくい内容なのです。
ですので、そもそもが「安全運賃制度がそこまで必要なのか」と疑問を呈する識者もいらっしゃいます。
それよりも、無理から要求を通すという行為を行いたいだけなのではないのか、あるいは今回の安全運賃制度に付帯して要求している「賃上げ」を通したいだけなのではないのか――といった疑問の声も上がっています(もちろん少数の声です)。
『民主労総』のヤン・ギョンス委員長は、組合員は総会、早退、休暇などあらゆる手段を動員して来る12月6日に「闘争に討って出る」とも述べています。
政府・企業側からしたら「勘弁してくれ」ですが、これはもう「セメント業界が」や「建築業界が」などという話ではなくなりました。
韓国の全産業を揺るがす事態に拡大する勢いです。
各業界が泣き。被害は甚大
実際、タンクローリーが動かないのでガソリンスタンドに油を供給できず、スタンドに行っても「ガソリンがない!」という事態も起こっています。
※2022年11月30日17:41時点で韓国内でガソリンが切れたガソリンスタンドは計23カ所。
2022年11月30日、14:00に開始された国土交通部と『民主労総』との面談は40分で決裂。
政府の動きとは別に、経営者側の業界団体もいかに甚大な被害を受けているのかを(国民に)アピールしています。
同日、『韓国貿易協会』主管で『セメント協会』『石油化学協会』『大韓石油協会』『自動車産業協会』『鉄鋼協会』などの業種別団体代表者が合同記者会見を開き、被害状況を訴えました。
これによると、
セメント業界:180億ウォン
石油化学業界:680億ウォン
自動車業界:4億ウォン
etc.
となっています。
尹錫悦(ユン・ソギョル)政権としてもここで負けるわけには行きません。
韓国の労働組合はときに「貴族労組」といわれたりしますが、このまま放置すると韓国経済は沈むしかありません。いよいよ正念場かもしれません。
(吉田ハンチング@dcp)