韓国は「半導体強国」と誇っていますが、それはあくまでもメモリー半導体に限ったこと。また、この「誇り」には弱点があります。
2022年12月27日、『韓国貿易協会』(略称「KITA」)の国際貿易通商研究院が「グローバル半導体サプライチェーンの再編による韓国の機会と脅威要因」という非常に興味深いリポートを出しています(以下表紙)。
この中に、韓国の半導体産業の現在地を表すデータがありますので、数字を拾ってみます。
まず、半導体強国などといっていますが、韓国の半導体輸入の現状です。
韓国はどこから半導体を輸入しているか?
システム半導体:台湾……43.5%
メモリー半導体:中国……76.1%⇒参照・引用元:『国際貿易通商研究院』公式サイト「グローバル半導体サプライチェーンの再編による韓国の機会と脅威要因」
※このリポートは2021年末時点でのデータを基にしています:以下同
韓国はシステム半導体を台湾から最も多く輸入しており、その依存度は「43.5%」。こちらは分かりますが、問題はメモリー半導体です。
メモリー半導体の最大の輸入元は中国で「76.1%」にもなっています。
メモリー半導体強国と誇っているのになぜこんなことになるでしょうか。
『国際貿易通商研究院』は、「韓国企業の中国現地工場」の生産物量拡大が原因――としています。中国での生産が増えたため中国からの輸入が急増したのです。
仮に中国が本土で生産した半導体を禁輸したりすると、韓国はメモリー半導体強国であるのにかかわらず、「メモリー半導体がない!」という事態にならないでしょうか。
次に半導体製造に必須の装備です。
韓国は半導体製造に必要な装備はどこから輸入しているか?
アメリカ合衆国:26.9%
オランダ:26.3%
日本:24.3%
合衆国・オランダ・日本と、ほぼ同じような数字です。しかし、それぞれに得意分野があって、これをうまく分散できているといっていいのかは疑問です。
『国際貿易通商研究院』のリポートから引用すると以下のような具合です。
(前略)
例えば、韓国はEUVリソグラフィ(露光)装置をオランダに完全に依存しており、イオン注入機は合衆国からの輸入比重が84%に達する。
(後略)
(これは当然ともいえますが)露光装置は100%オランダ依存、イオン注入装置は合衆国に84%依存です。
合衆国が構築しようとしている反中国・半導体サプライチェーンからはじき出されたら「韓国はおしまい」ということが分かる数字です。
さらに半導体製造に必要な素材です。
韓国は半導体製造に必要な素材はどこから輸入しているか?
日本:40.1%
中国:17.1%
韓国は半導体製造に必要な素材の4割を日本に依存しています。つまり、日本は韓国の半導体製造の首根っこを「素材」の面で押さえていることになります。
最も進んだ半導体製造の微細工程技術を持つとされる台湾も同じようなもので、同リポートによれば台湾は以下のようになっています。
台湾は半導体製造に必要な素材はどこから輸入しているか?
日本:45.7%
中国:15.8%
台湾の場合は、素材の日本依存度は韓国より上がって「45.7%」となります。
では、半導体の自国内生産能力はというと……。
自国内生産比率
台湾:24.2%
韓国:19.9%
韓国は台湾の後塵を拝しています。
なぜかというと――『国際貿易通商研究院』は「『サムスン電子』と『SKハイニックス』の半導体生産量は世界最高水準だが、生産施設の相当部分が海外に位置しており、実質的な国内生産量は台湾に比べて少ないと集計された」と説明しています。
また『国際貿易通商研究院』は、
韓国は半導体製造用の装備について、輸入品目の37.5%が「特定国に90%以上依存している」
と結論づけています。ちなみに、
台湾:12.1%
合衆国:0.0%
日本:0.0%
中国:0.0%
なので、韓国の半導体産業はサプライチェーンの混乱に対して他国に比べて非常に脆弱なのです。
素材の方はどうなっているかというと、
韓国は半導体製造用の素材について、輸入品目の18.2%が「特定国に90%以上依存している」
という結論です。素材の方でも、
台湾:16.7%
合衆国:7.8%
日本:0.0%
中国:0.0%
なので、韓国は素材の面でも主要国の中でサプライチェーンの混乱に最も脆弱だといえます。
中国市場が大事かもしれませんが、韓国は合衆国の反目に回ることはできません。そのときは半導体産業は壊滅的な打撃を受けるでしょう。また、韓国半導体企業の中国リスクをどこまで軽減できるかは焦眉の急です。
(柏ケミカル@dcp)