2023年01月17日、韓国金融委員会が韓国の5大金融持株会社(そのまま5大銀行に当たります)を集めて緊急の非公開会議を開催しました。
韓国のもう一つの時限爆弾であるPF(プロジェクトファイナンス)の満期償還問題についてが議題でした。
危ない不動産PFの実情
金融当局が焦っているのは、2022年第4四半期に起こった『韓国レゴランド』のPF ABCP(Asset-Backed Commercial Paper:資産担保コマーシャルペーパー)の満期償還できない宣言――に端を発する資金調達市場の大混乱。これが念頭にあるからです。
Money1でもご紹介してきたとおり、不動産開発資金を調達するためのPFスキーム、これによる未償還金額(融資段残高)が積み上がっています。
PFはハコモノ行政にも利用されていますので、地方政府が関与している分だけ見ても、『韓国預託決済院証券情報ポータル』によれば……、
01月:17兆ウォン
02月:10兆ウォン
03月:5兆ウォン
小計:32兆ウォン
と第1四半期だけで総額32兆ウォンものABCPが満期を迎えるのです。
これが一部でも満期償還できませんでした、となると資金調達市場に再び大きな衝撃を与えます。「地方政府が関与しているのにまた飛んだのか!」となるからです。
もちろん、他に完全に民間の不動産開発のPFもあります。
さらに、今回集まった5大金融持ち株会社、すなわち第1金融圏で大きな力を持つ銀行だけで済むような話でもありません。非銀行のPFローン残高も100兆ウォン以上に積み上がっているのです。
上掲とおり、2022年時点で非銀行のPFローン残高は「109.8兆ウォン」もあります。
危ないPFは満期延長する!
――で、今回の本題にいきます。
17日に行われた金融委員会の非公開会議は「不動産PF点検会議」であり、5大金融持ち株会社、国策銀行、その他金融機関が集まりました。
結果、5大金融持ち株会社が協議体を作り、保有する約30兆ウォンのPF融資のうち、資金難で償還が危ないとされるものの満期延長、再投資を推進する――となりました。
金融当局としては、償還不可となって資金調達市場が混乱、またPFがスキームとして吹き飛ぶことはどうしても避けなければなりません。ただでさえ不動産バブルが弾けるのでは、と懸念が高まっています。内需の大きな柱である不動産セクターを傾けるわけにはいかないのです。
ただ、この措置は「償還できません」という不良債権を抱えることになるので、金融機関側にとっては困った話でもあります(延長しても償還できればいいですが)。個人への融資が焦げ付くのとは金額がまるで違います。
また、「再投資」とさらっと述べていますが、これは「盗人に追い銭」にならないのか、という懸念もあります。
ドタバタになって参りました。
(吉田ハンチング@dcp)