米フォード「韓国企業は火事にならないバッテリーを作れ」

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韓国メディア『朝鮮日報』が興味深い記事を出しています。韓国を代表する電気自動車用バッテリーメーカー『SK ON(オン)』についてです。

『SKオン』と『フォード』は蜜月だったのに……

まず「前振り」です。

『SKイノベーション』の事業部を切り出して子会社としたのが『SKオン』ですが、一応『サムスンSDI』『LGエネルギーソリューション』と並んで、韓国の電気自動車用二次電池のメーカーとしてはTop3に入ります。

この『SKオン』は、アメリカ合衆国の自動車メーカー『Ford(フォード)』と蜜月でやってきました。『フォード』が(よせばいいのに)電気自動車に思い切り舵を切って、バッテリーの大量供給が必須となったからです。

『SKオン』は、合衆国ジョージア州にバッテリー供給用の工場を建て、2021年にはテネシー州とケンタッキー州に合弁工場を、2022年にはトルコに合弁会社を造ることを合意していたのです。

ところが、2022年の第3四半期辺りから両社の関係に変化が生じます。

2022年09月、『フォード』のJim Farley(ジム・ファーリー)CEOが『SKオン』などの韓国バッテリーメーカーを訪問して「歩留まりが悪い」と強く抗議したといううわさが立ちました。

良品がどのくらいの率で製造されるのかは分かりませんが、もしうわさが本当なら、CEOが直々に乗り込んで文句を言うほど、品質に問題があったことになります。

また、『フォード』は低価格で電気自動車用バッテリーを量産している中国『CATL』と接触。

2023年02月13日、「インフレ削減法」(略称「IRA」)をかわすため、『CATL』と組んで合衆国ミシガン州に『フォード』が100%所有する電池工場を造ると発表しました。

100%『フォード』が持って合衆国に建設する工場なら「IRA」に抵触しないだろう――というわけです。

ほとんど「はしじゃなく真ん中を歩いて渡りました」という一休とんち話みたいな逃げですが、『フォード』は、とんちでガラをかわさないといけないほど困っている、というわけです。

それもこれも『SKオン』の提供するバッテリーが予定どおりの品質ではないから、と予想されるのですが、これを証明するような事案が発表前に起こっています。

「火事」です。

品質検査中に火事を起こした! 原因は『SKオン』のバッテリーだ

2023年02月04日、『フォード』の電気自動車、ピックアップトラックの「F-150 LIGHTNING(ライトニング)」が品質検査中のラインで火災を起こし、隣にあった自動車も延焼。


↑『フォード』の電気自動車「2023 F-150 LIGHTNING(ライトニング)」/PHOTO(C)『Ford』

この事案によって『フォード』は、同車種の生産を停止。「原因はバッテリーの欠陥にあった」としました(下掲記事参照)。

⇒参照・引用元:『CNBC』「Ford F-150 Lightning production halt was triggered by vehicle battery fire」(フォード F-150 ライトニングの生産停止は、車両のバッテリー火災が原因でした)

実はそれだけではありません。さらなる『CNBC』の追加報道によれば、火災の1週間前、01月27日には、『フォード』は、一部の車両に対して、高電圧バッテリーの「性能低下を防ぐ」ために部品を交換する「カスタマーサービスアクション」を通知しています。

どうも怪しい動きで、『フォード』が『SKオン』の製造するバッテリーに対して不信感を抱いていることがうかがえます。このような流れで『朝鮮日報(日本語版)』が興味深い記事を出しています。

『朝鮮日報』の記事から以下に一部を引きます。

フォードは今月初め、人気の電動ピックアップトラック「F150ライトニング」の生産を急きょ中止し、最近になって原因が電池火災にあると詳細を公表した。

フォードは15日、「今月4日、完成車の品質検査中に火災が発生し、隣の車に延焼した」とし、自社が立てた対策を電池生産工程に適用するのに数週間かかる可能性があると説明した。

バッテリー供給元であるSKオンに責任を転嫁するようなニュアンスだ。

これに対し、SKオンは「個別の問題であり、原因究明を完了し、再発防止策も立てた」と表明したが、社内では「フォードが不必要に事を荒立てている」との不満が広がっているという。
(後略)

⇒参照・引用元:『朝鮮日報』「バッテリー提供のSKオンに相次ぎ責任転嫁…フォードCEOは何を焦っているのか」

『フォード』がバッテリーの欠陥で「F-150 ライトニング」が火災が起こった――としたことを恨むような書きようです。「責任を転嫁するようなニュアンス」とはすごい物言いです。

「フォードが不必要に事を荒立てている」との不満が広がっている、と書いているのも呆れるばかりです。自動車で火災が発生し、人命に関わるような事故が起こるかもしれない――というのは「不必要な懸念」なのでしょうか。

どうも『朝鮮日報(日本語版)』は、「自動車メーカーは安全に万全を期さなければならない」という事実を甘く見ているとしか思えません。

「燃えないバッテリー」をつくれよ!

同記事の以下の部分はもっと呆れます。

(前略)
電池業界にはフォードが供給量を増やすよう無理な要求を行い、SKオンが増産を急いだところ、さまざまな事故が起きたとの見方もある。

SKオンは「両社の関係に大きな問題はない」とコメントしている。
(後略)

⇒参照・引用元:『朝鮮日報』「バッテリー提供のSKオンに相次ぎ責任転嫁…フォードCEOは何を焦っているのか」

『フォード』が『SKオン』に無理な増産を注文し、それで『SKオン』の生産するバッテリーに不具合が起こったというのです。これなど稚拙な自国メーカー擁護の弁に過ぎず、まさに噴飯物です。

『フォード』のCEOが言いたいことはただ一つでしょう。

「燃えないバッテリーをつくれよ!」です。

(吉田ハンチング@dcp)

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