『韓国銀行』が国民年金公団と為替スワップ(韓国記事に表記を合わせます)を締結しています。350億ドル規模です。
これは、『韓国銀行』が提供するドルと『国民年金公団』のウォンを交換して、『国民年金公団』が市場で「ウォン売りドル買い」を行わないようにするためです。
『韓国銀行』が『国民年金公団』の持つドルを吸い上げるという話ではありません。『韓国銀行』がドルを提供する仕組みです。
巨額のウォン売りを避けることで、ウォン安進行を阻もうとするものです。少なくとも建て付けは。
これを『韓国ガス公社』とも締結しようとして、断られたことは先にMoney1でもご紹介しました。しかし、動いたのは企画財政部でした。韓国の金融当局は、企画財政部および『韓国銀行』です。
『韓国銀行』の意図はともかく企画財政部がこの為替スワップを主導しているわけです。
面白いことが分かりました。
2023年04月28日、『国民年金公団』が臨時理事会を開き、「国民年金基金運用規定の一部を改正する規定案」を審議したのです。
改正運用規定では、取引金融機関に「政府と『韓国銀行』を追加する」としています※1。
「政府」を取引金融機関と認定するのは異例のことで、これは「政府とも為替スワップを締結するための措置」です。
つまり、韓国政府が有する「外国為替平衡基金※2」と『国民年金公団』との為替スワップを締結するよう目論んでいるわけです。
実際、韓国メディアの報道によれば、「国民年金関係者が『今後外国為替スワップ締結の可能性を考慮して(政府と韓銀を)追加した』と話した」と報じています。
国民年金は保健福祉部の承認を経て改正案を最終確定する方針です。
韓国政府は『韓国銀行』を通さずに『国民年金公団』と直取引できるルートが欲しいわけですから、どうもあまりいい感じはしません。
※1先に『韓国銀行』がスワップ契約を締結できたのは、国民年金運用規定の下位規則である「基金運用規定施行規則」に取引金融機関として書かれているからです。今回の改定が実施されれば、上位則でも取引金融機関と認められることになります。
※2
韓国政府は「外国為替平衡基金債券」(略して「外平債」)を発行して為替介入用の資金を集め、これを外国為替平衡基金にプールします。この債券は「為替介入用の資金を集めるための国債」という世界的にも「何それ?」という特殊なものです。現在では、「国債」と同じくくりになっていますが、英語表記では「Foreign Exchange Stabilization Bond」として企画財政部が公表する資料では、いくら発行されているかを確認できます。
(吉田ハンチング@dcp)