アメリカ合衆国下院で中国をさらに締め上げる「PRC Is Not a Developing Country Act」(中国は発展途上国ではない法案)を可決しました。
上掲の先記事でご紹介しましたが、この法案は「(合衆国)国務省に対し、中国が国際機関によって発展途上国に分類されるのを阻止するよう行動することを要求する」というもの。
国際機関、例えば『UN』『WTO』などで中国が発展途上国に分類され、権利や支援を得られることを阻むのが目的です。
「GDPで世界第2位の大国」と自称する中国が、発展途上国で言い張って特権を得ているのはおかしな話です。中国から特権を剥奪するのは当然のことでしょう。
合衆国のこの動きに対して、中国は当然反発しています。2023年05月12日、中国外交部の定例記者ブリーフィングで以下のような質疑応答がありました。
『チャイナデイリー』記者:
少し前に、合衆国下院は「中国は発展途上国ではない法」を可決し、米国務省に中国の発展途上国地位を削除するよう国際機関に影響力を行使することを求めた。最近、合衆国議会は、『WTO』における中国の発展途上国資格に反対する別の決議案も提出した。
一部の評論家は、合衆国のこの動きは、中国を抑圧し封じ込めるために、国際法よりも国内法を優先させようとする動きだと考えている。これに対してどのように対応しているのか。
汪文斌:
中国は全ての当事者から最大の発展途上国であると認められている。合衆国は中国に「先進国」の帽子を与えようとしている。申し訳ないが、この帽子を中国は被ることができない。
2022年の中国の1人当たりGDPは1万2,741ドルで、先進国の1/5、合衆国の1/6に過ぎない。2021年の中国の1人当たり国民総所得は世界68位、開発指数は世界79位で、主要途上国の順位と変わらない。
また、中国の発展途上国としての地位は、国際法上も確固たる根拠を持っている。
途上国としての中国の地位は、世界貿易機関メカニズム、気候変動枠組条約、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書などの国際条約によって認められており、国際社会の幅広いメンバーによって受け入れられている。
中国の発展途上国としての地位は否定できない。
中国とアジア、アフリカ、ラテンアメリカの発展途上国は、長い間、民族解放運動で肩を並べて戦い、国家発展の過程で互いに支え合い、「困難の中の真の愛」の意味を鮮明に示してきた。
双方は長い間、連帯の絆を共有する運命共同体であった。 中国は欧米の「金持ちクラブ」に入ることなく、常に発展途上国と共に共通の権益を守るために戦っていく。
習近平主席が指摘するように、中国は常に途上国ファミリーの一員であり続ける。
また、途上国としての地位を維持することは、中国の正当な権利であることを強調したい。
中国は、その地位を国際的な責任を回避するための「盾」や、特別扱いを受けるための「壁のレンガ」として利用するのではなく、世界の平和と発展を促進するために、より多くの中国の貢献を積極的に行っている。
2013年から2021年にかけて、世界の経済成長に対する中国の平均貢献度は38.6%となり、G7諸国の合計貢献度を上回っている。
中国は国連のミレニアム開発目標の達成に率先して取り組み、世界の貧困削減に70%以上貢献し、国連への貢献度は第2位、平和維持への貢献度は第2位となった。
『WTO』において、現在中国が実際に享受している特別扱い・差配扱いの規定は、途上国の平均をはるかに下回っている。
中国が発展途上国かどうかは、合衆国が決めることではない。
さまざまな虚偽の議論を広め、中国の発展途上国としての地位を否定しようとする合衆国の真意は、中国の発展余地を抑圧・抑制し、中国に負担と責任を負わせ、中国と途上国の友好関係を刺激し、集団としての途上国台頭の勢いを妨害・減速させることにほかならない。
しかし、中国と発展途上国全般は、合衆国の策略に引っかかることはない。
中国は途上国としての地位をしっかりと守り、途上国との連帯と協力を力強く深め、国際ガバナンスシステムにおける途上国の代表性と発言力を高めることに揺るぎなく取り組み、途上国の正当な権利と利益をしっかりと守っていくだろう。
「中国は最大の発展途上国」だそうです。
汪文斌さんの回答は異例といえるほど長いものですが、要約すれば「中国は発展途上国をやめへんでー!」です。
言い分で面白いのは「他の発展途上国との連帯を強調している点」です。つまり、「合衆国の法案は中国だけではなく、他の発展途上国をもいじめるものだ」としたいのです。
違います。
合衆国の「PRC Is Not a Developing Country Act」(中国は発展途上国ではない法案)は、その名のとおり、明確に「中華人民共和国」(People’s Republic of China:略称「PRC」)をターゲットにしています。
汪文斌報道官が述べた「合衆国の真意は、中国の発展余地を抑圧・抑制し、中国に負担と責任を負わせ、中国と途上国の友好関係を刺激し、集団としての途上国台頭の勢いを妨害・減速させること」の後半部分は正しくありません。
集団としての途上国を標的にしているのではなく、中国を撃墜するのが目的です。他の途上国を巻き込もうとするのはやめたらいかでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)