韓国の借金の話など聞き飽きたでしょうが、政府負債の増加があらためて注目されています。
韓国政府の負債は予定どおり1,000兆を超えた
まず、韓国の監査院の公表データによれば、2022年末時点での政府負債は「1,033兆4,000億ウォン」となりました。
政府負債が1,000兆ウォンを超えたというので、韓国メディアも報道します。ただし、このこと自体はMoney1でも何度もご紹介しているとおり、予想どおりであって特に驚くことではありません。
「分かっていたことで改めて騒いでいる」――そんなところです。
しかし問題は、コロナ禍から脱して2023年は回復基調に乗るだろうという予測が(今のところ)全く外れ、おまけに回復が下半期に本当に達成できるかどうかも怪しくなってきたことです。
率直にいって韓国の景気はよくありません。
さらには政府財政が予測よりも悪化しています。ここで「お金をまけ」といわれても、韓国政府の財政余力は全くないのが本当のところです。
――で、政府負債。
「2023年には抑えられると考えられていた政府負債がまた拡大方向に戻るのではないか?」と懸念され、あらためて注目されているのです。
また負債増加に戻るのではないか?という懸念
韓国政府の債務増がこの3年「毎年どのくらいか増えたのか」というと、
2021年:119兆9,000億ウォン
2022年: 94兆3,000億ウォン
となります。「2022年は100兆ウォンを切った」と喧伝したりしますが、ちょっとマシだったという程度です。
そもそも文在寅前政権が支出を600兆ウォン規模にまで拡大したのが原因です。コロナ禍でお金をまかないといけなくなって、支出を大幅に拡大。これは当然、国債の発行などで補いましたので負債も急拡大しました。
経済が低迷したので「お金をまく」のは正しいのですが、政府支出を縮小することがまだできていません。
尹錫悦(ユン・ソギョル)政権になってからも、財政を引き締めるとしたのですが、コロナ禍の先行きが不透明、かつ景気減速が見えていましたので「金融緩和方向」から戻すことができませんでした。
そのため、2023年も600兆ウォンを超える予算を組みました。
尹政権は正しい方向で進みましたし、また当時の「霧の中」という状況では企画財政部を責めることはできません。
しかし、今度は税収が対前年比で大きく減少する(04月時点で約33兆ウォン減少)という事態に陥っています。
支出が増えていて収入が減少しているわけですから、政府財政は火の車です。
問題なのは、不足分はやっぱり国債発行(つまり負債増加)で補わないとならないということです。
「財政均衡」を金科玉条とするならトンデモない話。Money1でも何度もご紹介していますが、そもそも収入が400兆ウォン規模ほどしかないのです。普通にやってたら持ちません。
企業ではなく政府なので持っているだけです。
国家の信用格付けが落ちるかも……
財政均衡を金科玉条としないのであれば、いくらでもウォンを刷ればいいようなものですが、韓国の場合はそれが難しいのです。
格付け会社の存在です。
日本のように「信用格付けなんぞナンボのもんじゃい」という態度であれば、別に構いませんし、実際「韓国の方が日本より格付けが上」でも、日本のCDSは韓国より下です。
『Fitch(フィッチ)』『Moody’s(ムーディーズ)』『S&P』の世界的信用格付け会社は、3社共に政府負債が拡大してデフォルト騒動を起こさないかを重視しています。
MMT的な視点に立てば、「その国の通貨主権の強さが反映されていない」ということになるのですが、しかし韓国のようなローカルカレンシーの国では古典的な見方をされ、それに従わないと仕方ありません。
韓国は1997年のアジア通貨危機(韓国側呼称「IMF危機」)時に、信用格付が墜落して資金流出が抑えられなくなったことを、いまだにトラウマのように抱えています。
ですので、毎年信用格付け会社を協議を行い、格付けをなんとか維持しようとします。
Money1でもご紹介したとおり、格付け会社は「財政準則を守れ」と連呼しており、文在寅前政権が行った政府負債の異常な増加をなんとか止めないといけないのです。
で、上掲のとおり2022年は政府負債の増加を「100兆ウォン未満」で抑えました。
ところが、「政府負債がまだ拡大方向になるのではないか」と懸念が浮上している――というわけです。
信用格付け会社の顔色も窺いながら前進するしかないのですが、まさに「どうしますコレ?」という状況なのです。
とにかく景気を戻さないと税収も増えません。また政府負債が「100兆ウォン超え」で増えるかもしれませんが、「お金をまく」のが先になりそうです。
(吉田ハンチング@dcp)