おススメ記事

欧州委員会の関税賦課に「中国が泣く」理由。

広告

2024年06月12日、欧州委員会は、欧州域に輸入される「中国製電気自動車」に対して38.1%の関税賦課措置を発動する――と決めました。


欧州委員会が公表したプレスリリース。Googleの自動翻訳なので日本語がヘンなとことがあります/スクリーンショット。

中国は激怒するが……

中国はこの措置に対して非常に反発しています。例えば、定例記者ブリーフィングで林剣報道官は以下のように述べました。

「私が強調したいのは、今回の補助金反対調査は保護主義の典型的な事例だということです。

このため、欧州側は中国から輸入される電気自動車に関税を課しましたが、これは市場経済と国際貿易ルールの原則に違反しており、中国とEUの経済貿易協力と世界の自動車生産とサプライチェーンの安定性に損害を与え、最終的には欧州自身の利益を損なうことになります。

われわれはEUに対し、自由貿易を支持し保護主義に反対するという約束を守り、中国と協力して中国とEUの経済貿易協力の全体的な状況を守るよう求める。

中国は自国の正当な権利と利益をしっかりと守るためにあらゆる必要な措置を講じる」

⇒参照・引用元:『中国 外交部』公式サイト「2024年6月12日外交部发言人林剑主持例行记者会」

中国は激怒していますが、具体的に何をするのかといえば――欧州自動車メーカーに対する報復と見られます。

実際、『BMW』『フォルクスワーゲン』など欧州自動車メーカーは、自由主義貿易の原則に照らして今回の関税賦課はまずい――などと非常に頓珍漢な発現をしています。

中国は「自由貿易の原則」など守っていません。法の上に中国共産党があるおかしな体制なのです。こちらが「自由貿易主義の原則」を守っても相手が守らないのですから、主張がおかしいです。

中国に「自由貿易の原則」を守らせるのが先でしょう。そのためには引っぱたくしかないのです。痛い目に遭わせないと中国の方針を変えさせることなどできません。

『BMW』『フォルクスワーゲン』などのメーカーは「中国市場を失いたくないため」に原則などと言っているだけです。いわばポジショントークに過ぎません。

しかし、不思議だとは思われないでしょうか? 先にアメリカ合衆国・ホワイトハウスが中国産の電気自動車に100%の関税を賦課する(25%から100%に引き上げ)――と発表したときよりも、中国の反応は激烈です。

中国語メディアでは「今回の欧州の措置を『WTO』に提訴するべき」という強硬な声が上がっています。

中国の電気自動車は欧州市場頼みなのだ

合衆国の100%より、欧州の38.1%の方に怒るというのは、なぜでしょうか。

それは、中国産電気自動車の輸出が欧州市場頼みとなっているからです。

2023年末時点「中国の自動車輸出」地域別シェア

地域シェア(仕向け地域への輸出量/全輸出量)
欧州40%
北米20%
アジア25%
アフリカ5%
南米5%
オセアニア5%

データは『S&P Global』『Seatrade Maritime』『Car News China』etcより集計

上掲のとおり、全輸出量のうち40%が欧州向けなのです。自由民主主義陣営国から切り離され、嫌々「中国産自動車を購入するしかない」ロシアを含みますので、その分は割り引いて考えないといけませんが――それでも欧州市場から蹴り出されたら、中国産の電気自動車が大打撃を受けることはいうまでもありません。

そのため、中国としても「不当な措置だー!」と叫ぶしかないのです。

ちなみに『International Energy Agency (IEA)』『Atlantic Council』『South China Morning Post』『Merics』のデータを見る限り、2024年05月時点でも上掲比率は変わりません。

欧州は中国産の電気自動車をより明確にオミットすべく、より高率の関税を課すべきでしょう。

ただし、この関税率は暫定措置(07月04日に発動)。最終的な税率は暫定措置発動後の4カ月以内に確定されます(すなわち11月04日までに確定する)。また、関税率は一律ではありません。上掲の欧州委員会文書によれば、

サンプリングされた3社の中国メーカーに適用する個別関税は以下のとおりです。

BYD:17.4%
Geely(吉利汽車):20.0%
SAIC(上海汽車):38.1%

欧州委員会の調査に協力しなかった中国の他のすべてのBEV(バッテリー電気自動車)生産者には、38.1%が賦課されます。

(吉田ハンチング@dcp)

広告
タイトルとURLをコピーしました