中東メディア『Al Jazeera(アルジャジーラ)』が興味深い番組を放送しました。
『Head to Head』という番組で、司会を務めるMehdi Raza Hasan(メフディ・ラザ・ハサン)さんが、中国・鄧小平さんの通訳を務めた経験がある高志凱さんにインタビューした――という内容です。
※イギリス人、ジャーナリスト。
↑『Head to Head』はYouTubeの『Al Jazeera English』チャンネルでも閲覧可能です。上掲が高志凱さんにインタビューした回の動画です。タイトルは「Is Xi Jinping’s China on a path to war?」(習近平の中国は戦争への道を進んでいるのか?)です。
高志凱さんについてご紹介すると――、
高志凱(ビクター・ガオ、Victor Gao)
中国の著名な国際問題専門家であり、外交官、通訳、評論家として広く知られています。鄧小平さんの通訳を務めた経験もあり、特に中国政府の外交方針や国際戦略に関する知識と見識を持っていますとされます。
現在は『Asia Fact Check Lab』(略称「AFCL」:アジア事実検査研究所)に所属しますが、「戦狼外交」的スタイルを支持する発言で知られます。高志凱さんは、しばしば中国政府の立場を強く擁護し、国際舞台で中国の利益を主張する論客の一人と見なされているのです。
このアルジャジーラの番組では、ハサンさんが高志凱さんに鋭く切り込み、例えば以下のような会話がありました。
(高志凱さんは「中国は一つであり、台湾は中国の一部である。統一問題を解決するために戦争を利用することは望んでいない。平和的統一を実現する決意だ」と主張)
(これに対して)
「あなた方は戦争を望まないと言っていますが、実際には軍用機、軍艦、無人機、さらにはサイバー攻撃を使って台湾を包囲し、多くの脅威を与えています。さらに、あなた方の国防大臣はかつて『誰であろうと台湾の独立を求める者は粉々にされるだろう』と言いましたが、この言葉が平和的な人物の発言に聞こえますか?」
このようなやり取りはジャブ程度で、ハサンさんは以下のようにも述べて、中国共産党の矛盾を突きました。
「私はずっと『統一』という言葉が非常に興味深いと思っていました。
もしあなたの言うように、すでに一つの中国が存在するのであれば、さらに統一を実現する必要があるというのは明らかに、実際にはまだ統一されていないということです。
台湾の人々は自分たちの生活を営んでいます。なぜあなた方は台湾に対してそんなに執着するのですか?
あなた方の国はこんなに広大で、人口も台湾の60倍もあり、経済規模も非常に大きいのに、なぜ現状を維持させておくだけではいけないのですか?」
中国共産党の言う「一つの中国」というお題目、「統一を実現する必要がある」という主張に対するツッコミです。興味深いやりとりなので以下に両者の応酬について訳します。
高「主権と領土の保全に関しては、どんな一寸の土地も余計な土地ではなく、どんな人も余計な人ではありません。したがって、一つの民族として、私たちは統一を実現する必要があります」
ハサン「たとえ彼らがあなた方の国の一部になりたくないと思っていても、現在、台湾で中国と統一したいと言っているのはわずか12%に過ぎません。
あなた方はすでに最も人気のない存在です」
高「それは台湾の人々が決めることではありません」
ハサン「(驚いて)あなたは他人の意見、自由、そして尊厳をかなり率直に無視しているようですが、彼らがどう考えているかは気にしないということですか?」
ハサンさんは高志凱さんが過去にフランスのメディア『ル・モンド』のインタビューで
「台湾を取り戻したら、すべての人の身元を調査し、祖先に日本人がいる者は、共産党への忠誠を文書で誓わなければならない。
それを拒否するなら、そういった人々を追い出す」
と発言していたことを指摘。ハサンさんは「この発言は『民族浄化』を呼びかけているのではないか?」と切り込みました。
高「日本が降伏した後、多くの日本人が台湾に残りました。数十年後、その子孫は台湾人口の約10%を占めています※。
※大嘘です。台湾の人口は2024年01月時点で「約2,342万人」。その10%というと「234万人」になりますが、台湾における日系人は最大でも4万人程度と見られます:引用者注
もしあなたが調べたならば、頑なな台湾独立支持者の中に多くの日系台湾人がいることを知っているはずです。
そのため、統一後は、すべての台湾人が台湾が中国に属していることを認めるかどうかを約束しなければなりません。そして、その約束をした人だけがその土地の市民となるのです」
ハサン「しかし、あなたはその時、すべての人ではなく、日本の血統を持つ人々について言及していました。
それは民族浄化であり、あなたは人種を基準にして忠誠テストを行い、それに従わないなら彼らを追い出すと主張しているのです」
高「それは忠誠テストではありません。あなたがイギリス市民であるならば、イギリスにおいて君主制を支持しなければならないというのと同じです。『ノー』と言うことはできません」
ハサン「私は君主制を支持していませんし、チャールズ国王も好きではありません」
高「いいえ、そんなことは言えません」
ハサン「たった今、そう言いましたよ」
高「……まあ……国ごとに違うということですね」
(後略)
このように高志凱さんが発言している(できる)というのは、中国共産党がその内容を認めているからに他なりません。
中国共産党は、台湾を接収したら「すべての人の身元を調査し、祖先に日本人がいる者は、共産党への忠誠を文書で誓わなければならない。それを拒否するなら、そういった人々を追い出す」つもりなのです。
これは「血統によって人を侵害、迫害するという宣言」で、ハサンさんの指摘どおり「民族浄化」に他ならないでしょう。
中国共産党は台湾で日系人を排除する民族浄化を目論んでいると見なければなりません。
(吉田ハンチング@dcp)