2024年10月22日、中国の国家外為管理局が興味深いデータを公表しました。
外貨取引の収支です。
まず、国家外為管理局が述べたことを和訳して引用します。
中国国家外為管理局は、10月22日(火)に発表したデータで、09月の銀行の外貨決済額が2,377億ドル、外貨売却額が1,895億ドルとなり、482億ドルの黒字を記録したと明らかにした。
これにより、6カ月間続いた赤字が終わりました。ただし、今年前3四半期の合計では1,213億ドルの赤字が依然として残っています。
中国国家外為管理局の副局長である李紅燕氏は、国務院新聞弁公室での記者会見において、「09月末の株式市場の上昇が、決済赤字から黒字への転換の鍵となった」と述べました。
李氏は次のように説明しました。
「国内株式市場の上昇により、09月下旬以降、外国資本の国内株式購入が全体的に増加し、外国人投資家の人民元資産への投資意欲がさらに高まりました。
現時点で、海外投資家の中国国内資本市場への投資はまだ初期段階であり、人民元資産の保有規模や比率はそれほど高くありません。
外国人投資家が中国株式市場と債券市場で占める比率は3~4%程度です。今後、多くの有利な要素に支えられ、さらなる拡大の余地があると見ています」
また、李氏は次のように述べました。
「外国人投資家が保有する人民元建て債券の総額は6,400億ドルに達し、過去最高水準となっています。
今後、政策の実施が進むことで、中国の株式・債券市場への外国資本の魅力がさらに高まることが期待されます」
外為収支については後述しますが、まずご注目いただきたいのは、外国人投資家が中国の株式市場・債券市場で保有している資産の金額は、時価総額の3~4%に過ぎない――という点です。
つまり、株式市場・債券市場はそのほとんどが国内投資家によって支えられているというわけです。
だからこそ国慶節の連休明けの株価暴落で阿鼻叫喚の地獄絵図という状況になるのです。また、だからこそ中国当局は外国人投資家に対して「中国よいとこ、投資に最適」などという嘘を大声で言うのです。
李紅燕副局長は「(外国人投資家による投資が)さらなる拡大の余地がある」と述べていますが、さあどうでしょうか。余地はあるかもしれませんが、実際に外国人投資家が投資するかどうかは別問題です。
外貨収支が赤字で1,213億ドルも流出している!
今回の公表データでは、以下のようになっています。
(前略)
銀行による顧客向けの対外収支データによると、2024年前三四半期(01~09月)の外貨の流れは以下のとおりです:ドル建てでは、
収入:5兆2,594億ドル
支出:5兆2,566億ドル
収支:+28億ドル人民元建てでは、
収入:37.39兆元
支出:37.37兆元
収支:+187億元結售汇(外貨決済と売却)のデータは以下のとおりです。
ドル建てでは、
結汇(外貨決済):1兆6,762億ドル
售汇(外貨売却):1兆7,975億ドル
収支:-1,213億ドル人民元建てでは、
結汇(外貨決済):11.91兆元
售汇(外貨売却):12.78兆元
収支:-8,646億元
上記のうち、「収入:5兆2,594億ドル」……の方は、国際収支の外貨のやりとりです。
国際的な経済活動に関連する広範な資金の流れを表します。
●貿易収支(輸出入の決済)
●資本収支(投資の流入・流出)
●外資の流入と外国送金
●外貨準備の変動
が集計されたものです。
下の結售汇(外貨決済と売却)の方は、銀行を介した為替取引に限定されます。
結汇:輸出などで得た外貨を銀行に売却して人民元に換えること⇒外貨In
售汇:輸入などの支払いのために、銀行から外貨を買い入れること⇒外貨Out
つまり外貨の「入り」と「出」であり、その収支は幾ら外貨が入ってきたのか(出ていったのか)を示しています。
冒頭で引用したとおり――、
09月の銀行の外貨決済額が2,377億ドル、外貨売却額が1,895億ドルとなり、482億ドルの黒字。
これにより、6カ月間続いた赤字が終わった。
――のですが、実は01~09月累計では「-1,213億ドル」なのです。つまり、1,213億ドルが流出しているのです。
外貨流出が止まるかどうかは、この先を見ないと分かりませんが、Outが多いと為替レートに影響することになります。また、元安を止めるためには外貨を売らないといけない(元売りドル買いを行う)わけですから、こちらにも影響があります。
中国は外貨管理も含めて危ういところを綱渡りしているのです。。
(吉田ハンチング@dcp)