この記事を書いている2024年12月27日、20:33時点で、まだ12月27日(金)の市場は締まっていませんが、韓国では、以下のようにウォン安の急進をなんとか止めねば――な状況になっています(チャートは『Investing.com』より引用:以下同)。
20:33現在、高値は「1ドル=1,487.17ウォン」。一時「1ドル=1,490ウォン」突破するかも……だったのですが、戻しました。
ローソク足1本が1カ月の値動きを示す「月足」にして、時間軸を引くと以下のようになります。
1997年のアジア通貨危機(韓国での呼称は「IMF危機」)、2008~2009年の韓国通貨危機以来のウォン安水準です。
なぜ韓国はウォン安を止めたいのか?
韓国の外為当局はウォン安阻止に動いていますが、短期的な輸出の利益よりも、長期的な経済への悪影響が大きいからです。なぜウォン安を止めたいのかその理由を挙げてみます。
●外貨建て債務の負担増加
韓国企業や金融機関の多くは、外貨建ての債務を抱えています。ウォン安が進むと、ドルでの借金の返済額が増加し、企業や政府の財政負担が急増します。特に、外貨建て債務を多く抱える中小企業や財政的に弱い金融機関にとって、これが致命的になる可能性があります。
ちなみに、韓国の対外債務は2024年第3四半期時点で、上掲のとおり「7,027億ドル」です。
●輸入コストの増加と貿易収支の悪化
韓国は原材料やエネルギーを多く輸入に依存しています。ウォン安になると輸入価格が上昇し、企業の生産コストが増加します。このコスト増は国内の物価上昇(インフレーション)を引き起こし、国内消費を抑制する要因になります。
また、輸出が増えても輸入価格の上昇で貿易黒字が相殺される可能性があります。
このウォン安による輸出増と貿易黒字が相殺される(むしろ赤字になる)というトレードが韓国の難しいところで、要するに「ちょうどいい」というレートの帯域が極めて薄いと見られるのです。
●インフレーションと国民生活への影響
ウォン安による輸入品価格の上昇は、生活必需品やエネルギー価格の高騰を招きます。これにより、国民生活の負担が増え、経済全体の消費活動が低迷します。韓国当局はインフレが進むことで国民の生活に打撃を与えることを懸念しています。
●国際的信用度の低下
ウォン安が急激に進むと、韓国経済に対する信頼が低下し、海外からの投資資金が流出する可能性があります。
これにより、さらなるウォン安が加速する悪循環(これこそ通貨危機です)が発生します。韓国のような新興市場では、通貨の安定が国際的な信用を維持するために極めて重要です。
●資本流出のリスク
ウォン安が進むと、海外投資家は韓国市場から資金を引き揚げる傾向があります。
これは株式市場や債券市場の下落につながり、韓国の金融市場全体に不安定さをもたらします。このような資本流出は、通貨防衛のために『韓国銀行』がドル売り介入を強いられる原因にもなり(いわゆる「韓銀砲」)、外貨準備高の減少を招きます。
もうひとつは、過去のドボン騒動に起因する「恐怖症」です。通貨安が進行すると、また1997年のように『IMF』(International Monetary Fundの略:国際通貨基金)によって管理されるようになるかも――という恐怖です。
ですので、これは『IMF』恐怖症による「ウォン安防衛の動機」といえるかもしれません。
韓国はデフォルトするか?――しない。少なくとも今は
韓国がデフォルトする――と早合点している人もいますが、公表されている外貨準備高が本当にあるなら、まだその可能性は高くありません(むしろ低い)。また、先にご紹介したとおり、韓国のソブリン・リスクを示すCDSのスプレッドもそこまでに至っていはいません(上がってはいます)。
ただし、『共に民主党』が「光の革命」とやらを進めて、政府が機能しなくなり(もうなりつつある)、市場が「もう韓国はおしまいだろ」と判断してキャピタルフライトが急速に起こる――というシナリオはあり得ます。
何度もご紹介しているとおり、「韓国には政治的でないものなどない」のです。
もし「光の革命」とやらで金融危機が誘発されるなら、実に韓国らしいこと、といえるでしょう。
(柏ケミカル@dcp)