2025年10月30日、中国のハワイとして有名観光地である「海南島」で大規模なデモが発生しました。
「瓊中黎族苗族自治県」で起こったので「瓊中事件」(簡体字にすると「琼中事件」)と呼称されています。
海南の国有ゴム企業「海南天然橡胶产业集团」(略称「海南橡胶」「海胶集团」)の加钗分公司と、琼中黎族苗族自治县营根镇那柏村委会の村民との間で、土地の権属・利用を巡る争いが以前からありました。
この調整がつかないまま、2025年10月31日の午前、会社側が問題の区画に入って、そこにあった作物「槟榔树」を勝手に伐採して処分。
通常はビンロウの実を石灰のペーストと一緒に「キンマ(Betel leaf)」で包み、口に含んで噛みます。唾液が化学反応で赤く染まり、吐き出すと地面に赤い染みができます。そのため、台湾や東南アジアではよく路上が赤くなっていたりします。
「げっ、血痕か」と思うかもしれませんが、これはビンロウを噛んで吐き出した唾液なのです。
海南では、ビンロウは嗜好品であると同時に現金作物(換金性の高い農産物)です。特に海南橡胶(海南ゴムグループ)の農場地帯では、村民が槟榔を植えて副収入を得るケースが多く見られ、勝手に伐採して処分しやがった――と大問題になったのです。
これが村民の怒りに火をつけ大抗議活動・デモに発展しました。
↑毎度おなじみ『昨天』がYouTubeに上げた瓊中事件の動画。『昨天』は中国で発生した抗議活動を記録し続けているサイトです。
上掲の動画を見ていただければ分かりますが、会社側は公安を呼んでデモ鎮圧を図ったのですが、住民の怒りはすさまじく、ペットボトル、石、近くにあった椅子などを手当たり次第に公安に投げつけ、激しく抵抗。

どんどん人が集まって、会社のクルマをひっくり返したり、窓や看板を壊したりと大暴れ。「打倒海胶集团」「打倒土匪窝」などの怒号が飛び交う事態となりました。

動画がSNSで出回ると、同じ海南島の儋州・白沙・五指山などから若者が「応援」に加钗に駆けつけ、さらに会社・公安への非難・攻撃がヒートアップ。
「関係者の語るところによると」として――、
58.86万元の賠償金+10万元の再植資金(=作物を植え直すための費用)を村民側に支払うことで決着した
――という情報が出ています。足して約70万元ですから、もし支払いが本当なら、日本円でざっくり140万円ほどを勝ち取ったわけです。
このように中国の皆さんが企業や公安に抗議活動を行うのはとてもいいことです。
(吉田ハンチング@dcp)






