2025年06月14日、中国北京は突然の大雨に見舞われました。
↑『故宮博物院』。故宮は紫禁城とも呼ばれる明・清王朝の王宮。建物を使って貴重な財宝が展示されています。台湾には、同じ名前の「国立故宮博物院」があります。台湾の「故宮博物院」は、蒋介石政府が中国本土から選別・搬出した文物を収蔵した博物館です。国共内戦で中国共産党が優勢となったとき、中華民国政府は精選された文物およそ60万点のうち約6万点(10%)を台湾へ密かに移送。これを展示したのが台湾の故宮博物院。そのため、他院と本土の故宮博物院を比較すると「いいモノ」は台湾の方が多い――といわれます。
大雨の影響なのか、あるネットユーザーがSNSに動画を投稿、「故宮博物院の『楽林泉』大型展覧会の展示ケースにある明代の文徴明の書画「東園図」中の「東」の字の左部分が雨滴で濡れているように見える」と書きました。
06月15日、「故宮で雨漏り」が検索トレンドの上位に浮上。その後、(恐らく大慌てで)スタッフが緊急で会場を閉鎖し、展覧会は一時休止と発表されました。
文徴明(1470~1559年)は明代中期の文人・書画家・詩人で、「書・画・詩」の三芸すべてに通じた文化人です。本名は文璧、字は「徴明」、号は「衡山」「停云」です。
雨漏れで文字に水滴が……とされた「東園図巻」は、故宮博物院の説明によると「一級乙」※に分類される文化財であり、絹本に彩色された作品です(以下が全体像)。
故宮博物院といえば、中国を代表する国家的なミュージアムであり、歴代王朝の重要な文物が展示されていることで有名です。
※故宮博物院の分類によると「一級乙」とは「一級甲に準じる高価値文物。学術・芸術的価値がきわめて高く、重要な保護対象」とのこと。ちなみに最上級の「一級甲」は「国家級の極めて稀少で、学術・歴史・芸術価値が極端に高く、不可替代の文物。展示・貸出に極めて厳しい制限」です。
故宮博物院の収蔵物は「中華文化の精華」といわれたりしますが、もしそうなら、雨漏りするようではいかんでしょう。
面白いのは中国語メディアの報道です。
例えば、「文物保護の専門家によれば、古い書画が雨水に濡れたとしても、通常は深刻な損傷には至らず、再装裱(再表装)を行えばよいとのことである」とか書いています。
いや、そういうことではないだろ――です。まず雨漏りしない場所で厳重に保管するのが先でしょうに。こういうところに朝鮮半島のケンチャナヨ精神を似たものを感じさせます。
ただでさえ爆発・発火がお家芸の国なのですから、歴史的な文化財を後世に伝えること――をもう少し真剣に考えたらどうでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)