韓国政府が『国民年金公団』が保有する資産に手を突っ込む動きを強めています。
『国民年金公団』は保健福祉部の所管下に置かれた「特殊法人」で、国民年金基金の運用まで行っています(担当は国民年金公団の基金運用本部)。
この基金運用本部は、世界最大級の機関投資家の一つで、
株式
債券
オルタナティブ投資(インフラ、不動産、PEなど)
――を対象に資産運用を行います。ちなみに2025年09月末時点の運用資産は「1,361.2兆ウォン」となっています。
韓国メディアに世にもばかばかしい報道が出ました。
韓国の保健福祉部が「『国民年金公団』に外貨建て債券を発行させることを考えている」というのです。
なぜ『国民年金公団』が債務を背負わねばならないのか?
『国民年金公団』は、国民から国民年金の保険料を徴収し、年金基金にプールしてこれを運用します。投資して儲けが出れば、年金を給付するときの財源が増えますので、できるだけ投資運用でお金を膨らませるのが「基金運用本部」の仕事です。
運用の原資は「国民から集めた保険料」であって、よそから資金を調達する必要がありません。
なぜ外貨建ての債券を発行して資金を調達する必要があるのでしょうか? 債券発行するということは、投資家に対して利子を支払うということです。
資金調達をする必要もない上に、利払いのリスクも背負う必要がどこにあるのでしょうか?
はっきり言えば「ばかなんじゃねーの」という話です。
ウォン安を止めたい――の一心なのか
なぜ、こんなばかな話を検討しているかというと、端的にいってウォン安進行を止めるためです。
投資のクジラである『国民年金公団』が、外国に投資するのに、ウォン売り・ドル買いを巨額行うと、ウォン安が進行します。これを阻止するには、『国民年金公団』のドル買いを止める必要があります。
そのために『韓国銀行』は『国民年金公団』との為替スワップを締結しました。
『韓国銀行』がドルを供給し、代わりに『国民年金公団』は等価のウォンを『韓国銀行』に渡す――という仕組みで、これによって市場でのウォン売り・ドル買いをやめさせるわけです。
しかしこれでも足りないので、ドルの調達を『国民年金公団』自身が、外貨建て債券を発行して行うようにすればいいじゃん――というわけです。
非常に傲慢かつ無責任なオペレーションです。
ウォン安を止めるなんて『国民年金公団』のミッションではない!
考えてみてください。
債券発行するというのは、利払いが発生する債務を抱えることと同義です。その調達したお金で投資するわけですから、投資先から受け取れる利払いと、自分が行わなければならない利払いの差分しかもうけになりません。
できるだけ国民に給付できるお金を増やさなければならない『国民年金公団』は、そのような利払いのリスクを抱えるべきでしょうか?
そもそも、年金基金は「負債を増やしてリターンを追うべきではない」というのが国際的な原則で、常識です。
『OECD』も――、
年金基金の目的は「老後所得の確保」
最終目的は「加入者・受益者の権利保護」
――と原則を示しています。
しかも韓国政府が考えていることはリターンではなく「ウォン安を止める」という、『国民年金公団』のミッションから完全に逸脱したものです。
国民年金公団の保有する資産は、国民から集めたお金であって、皆さんの血と汗の結晶です。これをリスクにさらすなどということは言語道断でしょう。
韓国政府がやろうとしているのは、政策目的を「国民の老後」⇒「為替市場の安定」にすり替える行為であり、しかも、リスク(利払い・為替)を政府ではなく年金受給者側に付け替えようという卑怯な企みです。
さすが左派・進歩系政権です。よくこんな卑劣なことを思いつくものです。
韓国政府が本当に「『国民年金公団』に外貨建て債券を発行させる」なんてことを行うのであれば、それこそ世界的な物笑いのタネになるでしょう。
面白いので、ぜひやっていただきたいですね。
(吉田ハンチング@dcp)





