高齢化問題について先進各国でさまざまに議論がなされ、また日本でも解決策を模索しています。高齢者の老後を支えるための年金問題は、つまるところ現役生産者・労働者が減るので年金基金に入ってくるお金が少なくなることに起因します。
生産性を向上させるのは余剰貯蓄なのか!?
生産者・労働者が減るのであれば、その減少した人口でもお金が減らないように生産性を向上させることができないか? と考えるのは当然といえるでしょう。では、生産性を向上させるためにはどのような方法があるのでしょうか。
かつてはこのような考え方がありました。
資本を形成するには貯蓄が必要。貯蓄率を引き上げれば資本が形成され、ひいては生産性が向上する。つまり「余剰貯蓄が大きくなれば生産性が大きく伸びる」という説です。この説によれば「生産性向上の源泉は貯蓄にあり!」なのです。
しかし、この説は1950年代半ばにMITのMITのロバート・ソロー教授の研究(Robert M.Solow『A Contribution to the Theory of Economic Growth』,Quarterly Journal of Economic 70,1956)によって否定されています。ちなみにソロー教授はこの研究で1987年にノーベル経済学賞を受賞したのですが。
日本の高い貯蓄率は経済成長にほとんど貢献していない
日本人なら、上記の説が間違っていることがスグに分かりますね。もし余剰貯蓄が生産性の源泉になるのであれば、日本の生産性は世界第一位になっていなければなりません。毎度毎度で恐縮ですが、ジェレミー・シーゲルが日本の問題について下のように述べています。
<<引用ここから>>
「(前略)日本の貯蓄率は世界最高の水準にあるが、1990年代、生産性はほとんど伸びなかった。米国の生産性はおなじ時期、貯蓄率は低いままで力強く伸びた。
日本のケースをみると、貯蓄率が高すぎる国では、かえって生活水準が低下する場合さえあることがわかる。MITの学生だった頃、わたしはこれを理論的に謎とみていた。だがいまでは、最近のデータを踏まえて、こう確信している。日本の高い貯蓄率は経済成長にほとんど貢献していない、1990年代、日本政府の次々に景気浮揚策を打ち出し、橋梁や道路建設といった公共投資を大幅に増やしたが、見返りはきわめて乏しかった。日本の場合、民間セクターの投資収益率も、マイナスとはいわないまでも、大部分は低水準であることがわかっている。
貯蓄率が高齢化危機に対する答えになるなら、先進国の中でどこより貯蓄率が高い日本は、高齢化問題などどこ吹く風であるはずだ。だが、事実はそうではない。高齢化問題を世界的に調査した経済学者。ポール・ヒューイットはこう述べている。「現在の日本経済が抱える問題の大半は、直接引き起こされたか、加速された形で、人口動態の変化から起こっている」。エコノミスト誌は、こうまでいう。「だが残念ながら、日本の景気は若干上向いたものの、高齢化は加速する一方であり、このまま袋小路に陥らないともかぎらない」
貯蓄率引き上げが生産性向上の答えでないなら、なにが答えなのか?
⇒データ引用元:『株式投資の未来 永続する会社が本当の未来をもたらす』著ジェレミー・シーゲル/瑞穂のりこ訳(原題:The Future for Investors)P.226より引用
<<引用ここまで>>
何度も引用しますが、日本の家計資産残高は1,700兆円もあります。莫大な金額ですが、これが生産性の源泉になればいいのですが、そうはならないというわけです。さて、超高齢化社会といわれる日本の最適解はどこにあるのでしょうか?
(柏ケミカル@dcp)