ここのところ韓国の「なんとか基金」についての記事が続いていますが、今回は「電力産業基盤基金」にまつわる件です。
現文在寅政権がこの「電力産業基盤基金」のお金に手を付けて「脱原発」を推進しようとしている、と韓国で注目されています。
2020年07月02日には、そのための「電気事業法施行令の一部改正」を行うことを予告しました。
どういう筋の話なのかについてご紹介します。
年間に「約5兆ウォン」の積立がある
「電力産業基盤基金」は、『韓国電力』を民営化するのに合わせて造られた基金です。電力は重要な公的インフラですが、これを拡充するには大きな資金が必要です。そこで、お金をプールしておく仕組みが準備されたというわけです。
ところが、『韓国電力』の民営化はすったもんだの揚げ句、とりやめになります。
ですが「電力産業基盤基金」の仕組みは残ったのです。
ユーザーが電気を使用すると、その料金の3.7%が基金に入るようになっており、2020年に予定された基金の積立額は「4兆9,696億ウォン」(約4,453億円)※1。
文在寅政権は、このお金を使えるように法律を改正しようとしているのです。
「そうだ電力産業基盤基金のお金、使おう。」
文在寅政権がこのお金を使いたい理由は、自身が掲げる「脱原発」政策のためです。
7,000億ウォンをかけて改修・整備した原発「月城1号機」の再稼働を認めない、予定されていた新規原子炉建設の白紙撤回、などを行ったため、韓国の原発産業は一気に傾きました。
電力供給計画にも齟齬が生じているのですが、一気に急ブレーキをかけたため、『韓国電力』をはじめ電力関連産業に「大きな負担増」となっているのです。例えば上記の「7,000億ウォンはどうしてくれるんだ」といったことです。
当然、電気料金を上げて消費者に負担をお願いする――となりそうなものですが、文在寅政権は、
2022年までは、脱原発政策によって電気料金を上げることはしない
と先(2017年05月)にぶち上げてしまっているのです。
で、電気料金を上げて費用を捻出することもできず、別のところからお金を持ってくるしかない。
「そうだ!『電力産業基盤基金』のお金を使おう!」というわけです。
借金王の文在寅政権としては、借金しないでも使えるお金があるのなら「是が非でも使っていきたい」のでしょう。
問題は、約5兆ウォン程度のお金では「脱原発」を達成できそうもないことです。「電力産業基盤基金」以外の資金源が見つからなければ、電気料金を上げるしかなくなるでしょう。
この件を報じた『中央日報』の記事は以下のようにまとめています。
(前略)
しかし、「脱原発」は小遣いレベル(「電力産業基盤基金」の積立金のこと:筆者注)で止めることはできない。7,000億ウォンをかけて改・補修した「月城1号機」は稼働を停止した。新規原発建設の白紙化による損失の規模は数兆ウォン台に上る。
関連産業の被害まで考慮すると、数十兆ウォンに達するという分析が出ている。
政府は、いったん「電力産業基盤基金」で急な火を防ぐつもりと見られる。しかし、結局は電気料金の引き上げと関連公共機関の財政悪化は避けられないだろう。
(後略)⇒参照・引用元:『中央日報』「【現場にて】脱原発のコスト、最終的に電気料金で負担…3年もたなかった『偽りの約束』」(原文・韓国語/筆者(バカ)意訳)
※赤アンダーライン、強調文字は筆者による
というわけで、韓国政府の対応は泥縄式で、とても褒められたものではありません。また「脱原発のコスト」を根本的にどうするのかという問いに文在寅政権は回答していません。無責任な話です。
※1ウォン円の換算には2020年07月04日の「1ウォン=0.090円」を用いました。
(吉田ハンチング@dcp)