自動運転自動車の開発も最終段階で、法律の改正などを伴う環境さえ整備されればスグにも第1弾がリリースされるでしょう。
自動車市場は世界中にあり非常に大きいですから、その技術開発競争は熾烈なもの。最新テクノロジーによって他社をリードしようとするのはどの会社も同じですね。
日米独の主要三カ国のメーカーだけでなく、インド・中国など新興国のメーカーもシェア争いにしのぎを削っていますが、自動車についての技術はやはり歴史あるメーカーに分があります。
ですから、アメリカの新興メーカー『テスラ(Tesla, Inc.)』は、電気自動車造りに特化することで、世界の主要自動車メーカーを向こうに回してかなりいい戦いをしているといえるでしょう。
■「テスラ」ってどんな会社? CEOマスク氏は伝説の人物!
『テスラ』は、Martin EberhardとMarc Tarpenningによって2003年に設立された、電気自動車の開発・製造・販売を行う会社です。
現CEOであるイーロン・マスク(Elon Musk)氏は2004年-の資金集めを主導し、現在の地位に就きました。テスラが高く評価されるのは、マスク氏が立志伝中の人物だから、という面もあります。
マスク氏は南アフリカ共和国の出身。10歳のときにコンピューターを買ってプログラミングの勉強を始め、12歳のときには既に商業用ソフトを販売していたという恐るべき早熟ぶり。
1989年には南アフリカからカナダへ移住(母親がカナダ人だったのでイーロンにもカナダ国籍があった)。その後、奨学金を受けてアメリカのペンシルベニア大学へ入学。1995年にはスタンフォード大学の大学院に進学しますが2日で辞めています。
弟と一緒につくった『Zip2』社(後に『コンパック』社に売却)を皮切りに、1999年『X.com』社を設立(共同設立)と起業に力を注ぎます。このX.com社は2001年に『PayPal』社となります。
2002年には、ロケット製造の民間会社『スペースX』社を起業。この会社は、民間企業による宇宙輸送を可能にするため現在もロケットの打ち上げ実験を続けています。
そして2004年テスラ社に投資し、現在はCEOとして同社を主導しているのです。
■テスラは評価され過ぎなのか!?
10月13日のロイターの記事によれば、「テスラは09日以降に中間管理職など約400人を解雇した」とのこと。元社員が「これまで全く低評価を受けたことがないのに解雇された」と語ったそうです。テスラ社では「年次の全社的な評価作業の結果」としています。
テスラでは、セダンタイプの新型車『model3』の生産が遅れています。10月06日時点で、第三四半期の『model3』の納品は予定1,500台に対してわずか260台であることが判明。すでに予約は37万台超も入っているのですが。
「生産のボトルネックが解消されない」とマスクCEOは述べていますが、このような生産ラインの調整、維持・継続といった場面においてはやはり従来のクルマメーカーに一日の長があるのでしょう。
テスラは革新的な企業に見えますが、その見かけによって「評価され過ぎ」だと指摘する識者もいます。テスラの株価は下のように推移しています。
4-6月の四半期の決算が出た際(2017年8月)には、約4億ドルの赤字でしたが、それでも株価は上昇しました。このような実業での結果が株価にストレートに反映されないときは「危ない」のです。
※10月13日時点でテスラの時価総額は593.4億ドル。これはフォードの時価総額(478.6億ドル)を大きく上回るものです。
中には「インターネット株バブル」の影を見る識者もいらっしゃいます。「達成されるであろう未来」への幻想が大きすぎて、それに目がくらんだ投資家がお金を突っ込み、そのため時価総額が大きく膨らむのです。
もちろんテスラの株価が今後どうなるのかは分かりません。しかし、投資家の期待(とお金の投下)だけでは会社は継続できません。会社を続けられるだけの利益を自ら生み出さないといけないのです。テスラが本当に革新的な起業なのか、その真価が訪われているのは「まさに今」といえるのではないでしょうか。
(柏ケミカル@dcp)