2025年01月10日、中国の中央銀行『中国人民銀行』が以下のプレスリリースを出しました。
最近の政府債券市場において供給不足の状態が続いていることを踏まえ、中国人民銀行は2025年01月より公開市場での国債購入操作を一時停止することを決定した。
今後は国債市場の需給状況を見極めつつ、適切なタイミングで再開を検討する予定である。
『中国人民銀行』が市場での国債買い入れを停止するとしました。なぜこんなことをするのでしょうか?
ずいぶん前にご紹介したことがありますが、まず中国の国債の利回り曲線は低下し続けています。
以下は中国の国債10年物の利回りチャートです(チャートは『Investing.com』より引用:以下同)。
まさに「なんだこりゃ(笑)」ですが、陰線ばかりで利回りが下がり続けています。
これは債券ですので、利回りが下がるということは、中国の国債の価格が上がり続けていることを意味します。
なぜこんなことになるかというと、他に投資先がないからです。
不動産市場は壊滅し、中国の株式市場など信用できません。安定したと投資先として(少なくとも今日明日飛ぶことはないと考えられるので)中国共産党政府が発行する国債に資金が集まるのです。
中国政府からすると、国債を購入してもらえるのは助かります。資金調達できるので。また、『中国人民銀行』が国債を購入するのは「国債を買ってお金を放出する」わけですから、政府の「お金をまかなきゃ」にも合致しています。
しかし、その買いオペを止めようというのです。
なぜでしょうか? これは人民元安が進行していることが背景にある――と見られます。
人民元安が止まらない!
大朝鮮・韓国の弾劾宣布騒動・飛行機事故につられてご紹介できませんでしたが、人民元の安値進行が非常に重要なポイントにさしかかっています。
以下をご覧ください。まずオンショア。
↑2025年01月13(月)18:40現在のオンショア人民元チャート。上掲10日の『中国人民銀行』のプレスリリースを受けてギャップアップして「1ドル=7.3571人民元」です。7.3人民元を軽く超えています。
次にオフショア。
↑同じく2025年01月13(月)18:40現在のオフショア人民元チャート。「1ドル=7.3574人民元」です。7.3人民元を軽く超えています。オンショアと同じく人民元安が止まらなくなっているのが見て取れます。
ロマンチックではありません。人民元安が止まらなくなっています。
中国こそ為替操作国で、人民元安と狙ったレートに留めるためにはドル売り(人民元買い)を行わなければなりません。手持ちのドルが枯渇したところでレートを維持できなくなります。中国の外為当局は相当な苦労をしていると見られるのです。
国債にお金が集まって人民元が安くなるメカニズム
では、上掲のどんどん下がる国債10年物利回り曲線に、オフショアの人民元のチャートを重ねてみましょう。
以下をご覧ください。
↑紫色のラインがオフショア人民元です。
踊り場はありますが、最近では国債利回りが低下する傾向を人民元安の傾向は一致しています。
なぜこんなことになるかというと――、
1.債券利回りが低下 ⇒ 海外投資家の投資収益率低下 ⇒ 資本流出
2.国内市場で資金が債券に集中 ⇒ 流動性不足 ⇒ 経済成長鈍化 ⇒ 投資家心理の悪化
3.為替市場で人民元売りが増加 → 人民元安進行
――というメカニズムが働くからです。特に金利差の問題が大きいです。
中国国債に人気が集まって、利回りが低下する一方ですが、他国(特にアメリカ合衆国)の金利が高止まりしている場合、金利差が広がります。
お金は増える方に集まりますので――、
――この金利差によって、海外投資家が中国国債を売却し、高利回りの他国に投資先を切り替える動きが強まります。この資本流出が「人民元売り外貨買い」を伴い、人民元の下落要因になるのです。
つまり、『中国人民銀行』は「国債を売りますよ」という動きをやめて、国債の利回りが低下するのを止めないといけない――というわけです。
どん底景気の中国にお金を回すために「国債買います」はいいのですが、それも駄目になってきました。中国は袋小路に入りつつあります。
(吉田ハンチング@dcp)