2020年01月15日、韓国メディア『ソウル経済』に、『大韓航空』と『アシアナ航空』の合併はバラ色なんかではない、という冷静な記事が出ました。「いや、だからぁ」と言いたくなるような話です。
もう何度でも言いますが、そもそも2019年に事実上飛んでいた『アシアナ航空』と、2020年に事実上飛んだといってもいい『大韓航空』の合併がバラ色なわけはないのです。
合併で確かに債務比率は下がる!
確かに合併でいいこともあるのです。まず以下の現状をご覧ください。
『大韓航空』 | 『アシアナ航空』 | |
売上高 | 5兆7,025億ウォン | 3兆98億ウォン |
営業利益 | -117億ウォン | -2,552億ウォン |
当期純利益 | -6,518億ウォン | -6,238億ウォン |
負債比率 | 692.9% | 2,308.7% |
※2020年第1~3四半期の結果
『アシアナ航空』はまさに最悪で、負債が自己資本の23倍もあります。合併すると負債比率が「500%」台に下がると試算されているのです(524~545%と予測に幅あり)。その点ではずいぶんましな企業になります。
「キャッシュ」が要る! 持つのか?
では合併でバラ色の未来が待っているかというと全くそんなことはありません。負債比率はずいぶんましになりますが、合併までまだ1年以上かかります。
『ソウル経済』の記事では以下のように『産業銀行』の李東杰(イ・ドンゴル)会長の言葉を以下のように紹介しています
(前略)
実際、李東杰産業銀行頭取も「合併シナリオは2022年の夏、航空業が正常化する前提で行った」とし「コロナ19状況の改善がさらに遅れ、2022年の年末になっても航空業の正常化がされないと、問題が生じることになる」と述べた。
(後略)⇒参照・引用元:『ソウル経済』「[시그널 FOCUS] ‘항공빅딜’ 골든타임은 1년…16개국 결합심사 속도가 명운」
その間に経営状態は良くなるのでしょうか?
『アシアナ航空』は2019年の時点で事実破綻していました。ですから破綻はコロナ禍のせいではありません。事実上破綻していた企業を生かし続けるためにキャッシュが要ります。上掲のとおり、存命しても赤字ですから債権団が資金を入れ続けるしか手がありません。
債権団の管理下にある『大韓航空』も同様です。不足する資金は債権団が出すしかないのです。
『ソウル経済』記事では信用評価会社研究員の以下のような言葉を引いています。
(前略)
「合併の日程は早くても06月であり、各国の企業結合承認関連の不確実性によって6カ月延長されれば、今年末に合併を完了することができる。残りの6カ月間に状況が改善されない場合は、大規模な追加資本の拡充が必要になるだろう」
(後略)
今回の合併の旗振りが『産業銀行』なので、逃げることはないでしょうが、今回の合併でバラ色の未来を描くのはあまりにも早計です。
(吉田ハンチング@dcp)