Money1でもご紹介しているとおり、輸出が伸びず経済が傾いている韓国ですが自動車産業、『現代自動車』と『起亜自動車』は頑張っています。
コロナ禍、また車載用半導体不足による需要低迷と供給力の減衰からの反動が来ているのですが、半導体、石油製品などの不振に比較すれば絶好調といっていい状況です。
2023年上半期
総売上:80兆283.9億ウォン(+20.7%)
営業利益:7兆8306.3億ウォン(+59.5%)
当期純利益:6兆7662.2億ウォン(+39.2%)※( )内は対前年同期比の増減
⇒『韓国金融監督院 公示システムDART』公式サイト
対前年同期比で営業利益が「+59.5%」、純利益が「+39.2%」と大きく伸びています。
ただし、国全体の経済がうまくいっているわけではないのが、韓国の面白い点です。
それはともかく、このように自動車産業では『現代自動車』を頭にホクホクしているのですが、安心していてはいけません。こういう時には賃上げを求めて労働組合が忍び寄るでのす。
「分け前をよこさなければならない」です。
実は、『現代自動車』は、2023年09月11~12日、『現代自動車』では「現代自動車者労組」と経営側が交渉に入っています。交渉が難航しており、「現代自動車労組」は来る13~14日に4時間ずつ部分ストを行うと予告した状態です。
何がもめているのかというと「定年年齢の延長」です。
労組側は「定年を4年延長して満64歳にしろ」と要求しているのですが、経営側は難色を示しています。
要求には、労組員が高年齢化しているという差し迫った問題が影響を与えています。
日本に限らず韓国でも、労働組合に入る従業員が減っているのです。
『現代自動車』では、2012年までは従業員の74.1%が労働組合に加入していたのですが、2020年には70%以下に落ち、現在は62.3%(韓国内の従業員)。それほど時間を経ずして50%台まで下がるだろうと見られます。
で、労組員からすると、定年年齢の延長はまさに「我が事」であって焦眉の急なのです。ところが、若い世代や入社してそれほど時間がたっていない人、また経営陣からすると大きな問題ではないわけです。
また、労組員は生産職が多いのですが、『現代自動車』での職種別の人数を見ると、「2012年:5万9,831人」から「2022年:7万3,431人」と10年間で23%増加したにもかかわらず、生産・整備職軍が占める割合は同じ10年間で52.8%から44.8%に減少しました。
これもまた、経営陣からすると「労働組合の意見を容れなくていいや」と思う理由の一つとなっています。
とにかく韓国というのは労働争議の多い国ですが、『現代自動車』としては「これから」のことを考えれば、容易には定年延長に合意できないのです。景気のいいときに安易に受け入れて、後で景気が悪くなったらどうすんだ――ですから。
――というような話でもめていたのですが、2023年09月12日、『現代自動車』の労使は第23回交渉で妥結しました。
暫定合意案は、基本給11万1,000ウォン(昇給分を含む)引き上げ、成果金400% + 1,050万ウォン、株式15株、伝統市場商品券25万ウォンなどが盛り込まれました。
特別奨励金250万ウォンと事業目標達成奨励金100%なども支給します。
『現代自動車』は上掲のとおり業績が良かったので、なかなかの大盤振る舞いです。
まあイイ時はいいのですが、これが続きはしないのです。
(吉田ハンチング@dcp)