2021年08月06日、中国の『国家外貨管理局』から07月時点での外貨準備高が公表されました(以下)。
外汇储备……3兆2,358.90億ドル
(Foreign currency reserves)
対前月比:218.80億ドル増加基金组织储备头寸……103.32億ドル
(IMF reserve position)
対前月比:0.17億ドル増加特别提款权……114.46億ドル
(SDRs)
対前月比:0.36億ドル増加黄金……1,143.72億ドル
(Gold)
対前月比:39.22億ドル増加其他储备资产……-4.21億ドル
(Other reserve assets)
対前月比:-1.44億ドル減少計:3兆3,716.08ドル
対前月比:257.11億ドル増加データ出典:『中国 国家外貨管理局』公式サイト
「外汇储备」(外貨準備)は前月比で「218.80億ドル」(約2兆4,118億円)増加しています。「金」などを足すと全体で「257.11億ドル」(約2兆8,341億円)増えました。
直近18カ月の「外汇储备」(外貨準備)の推移を見ると以下のようになります。
ドルは足りているのか?
このように外貨準備は大きく増加したのですが……。
面白いことに、ネット上の中国語メディアでは「中国はドル不足に陥っているのではないのか」という指摘が出ています。
意外に思われるかもしれませんが、これは中国「国家移民管理局」の発表に着目した指摘です。
2021年07月30日、「中国 国家移民管理局」は上半期の入国管理のデータを発表し、同時に「入出国のための書類発行」を絞っていることを公表しました。
不要不急の海外渡航、また入国を認めない、というのです。
⇒参照・引用元:『中国 国家移民管理局』公式サイト「国家移民管理局記者会見」
国家移民局は、非必須、非緊急の通常のパスポートやその他の出入国書類を発行しないのは、デルタ株の感染拡大を防ぐためとしています。
どのくらいパスポートの発行が絞られているかというと……。
パスポート発行数
2021年上半期:33万5,000枚
(対2019年同期比:98%減少)※引用元は同上
この33万5,000枚は留学・雇用・ビジネスを目的とした普通パスポートですが、コロナ前の2019年と比較してわずか2%に過ぎません。
感染拡大を防ぐためという理由は納得できるものの、これによって資金流出を防ぐことができます。
実際、中国の国際収支統計の「サービス収支」を見てみると、「旅行収支」は
以下のようになっています。
中国の「旅行収支」推移
2019年第1四半期:-576億ドル
2019年第2四半期:-528億ドル
2019年第3四半期:-574億ドル
2019年第4四半期:-511億ドル
2020年第1四半期:-461億ドル
2020年第2四半期:-203億ドル
2020年第3四半期:-286億ドル
2020年第4四半期:-258億ドル
2021年第1四半期:-242億ドル
上掲のとおり、2021年第1四半期の旅行収支の赤字は「-242億ドル」まで減りました。2020年第4四半期は「-258億ドル」ですから、16億ドルがセーブできています。
コロナ前の2019年には、四半期平均「-547億ドル」の赤字でしたから、それと比較すると「約300億ドル」は資金流出を抑えることができています。
で、最初に戻りますが、パスポートの発行を制限し国民を海外に行かせないことでドルの流出をセーブしているのではないのか、という指摘なわけです。
なかなか興味深い見方ではないでしょうか。
(吉田ハンチング@dcp)