韓国野党『国民の力』の有力大統領候補である尹錫悦(ユン・ソギョル)前検察総長の立件に乗り出したことで日本でも注目されている「高位公職者犯罪捜査処」。
この組織は2021年01月21日に発足した新たな機関で、文字どおり、高位の公職者すなわち大統領、国会議長、大法院長(最高裁判所長官)、国会議員、政府機関の上級職者、地方政府機関の首長などの犯罪を捜査します(在職中だけではなく退職してからも捜査・起訴(後述)できる)。
また、これら高位公職者の家族も捜査対象とすることが可能です。
捜査対象が裁判官、検察官、判事、検事、警視長(韓国では「警察官)という司法の高位公職者の場合には起訴することができます。さらに、捜査が他の機関とかち合った場合には、捜査権限を(要請して)引き継ぐことができるとなっています。
現在の文在寅大統領はこの機関の設置を公約に掲げていました。
2019年12月30日、「高位公職者犯罪捜査処の設置及び運営に関する法律案」が国会本会議で可決され、「高位公職者犯罪捜査処」の設置に至ったのです。
「高位公職者犯罪捜査処」の問題点
「高位公職者犯罪捜査処」の設置には根強い反対がありました。
韓国では起訴権は検察だけが有しており、これによって検察には絶大な力がありました。しかし、「高位公職者犯罪捜査処」ができたことで、「高位公職者犯罪捜査処」にその権限が一部削られることになりました。
この「高位公職者犯罪捜査処」の処長は、以下のように決まります。
(前略)
第5条(処長の資格と任命)
①処長は、次の各号の職に15年以上いた人の中から、第6条の規定による高位公職者の犯罪捜査部長候補推薦委員会が2人を推薦し、大統領がそのうち1人を指名した後、人事聴聞会を経て任命する。
(後略)
つまり、大統領が最終任命権を握っており、「犯罪捜査部長候補推薦委員会」が政治的中立と保証されない限りは、政権・大統領にとって都合のいい人物(大統領や高位公職者に忖度する人物)が選ばれる可能性が高いのです。
実際、すでにこの「高位公職者犯罪捜査処」は、次期大統領候補として有力な尹さんの捜査、立件しています。
そもそもが内部情報を入手したというYouTuberが流した話を元に始まった捜査で、誰が流した情報かをメディアが調べようとしたところ、すぐにネタ元を「公益通報者」に指定し、メディアが接触するのを禁じる措置を執りました。
また「メディアが騒いでいるので立件します」という非常にいい加減な態度なのも問題です。
通常の検察捜査なら立件までに「公判を維持できる材料があるのか」を十分に調べ、外堀を埋めてからかかるものですが、市民団体が「捜査しろ」と訴えてからわずか4日で捜査に踏み出しているのです。
「調べりゃなんか出るだろ」という拙速な態度に他なりません。
ことほどさように、「高位公職者犯罪捜査処」という組織は、大統領やその周辺を忖度する機関なのでは?という疑念を裏付けるような動きをしているのです。
文大統領また政府与党としては、「高位公職者犯罪捜査処」によって尹さんを潰せると考えているかもしれませんが、もし保守派が次期政権を握ったら、その矛は自分に向くことになります。
(吉田ハンチング@dcp)