韓国造船業がまさしく「言わんこっちゃない!」という事態であることが発覚。韓国メディアが騒いでいます。
カタールから100隻受注と湧いていたが……
2020年に「韓国造船会社がカタールからLNG船を100隻受注した!」と湧いていたことを覚えていらっしゃるでしょうか。これはスロット契約であって、造船ドッグを押さえておいてね――というものだったのですが、では実際に発注はきたのか?
横から中国に注目をかっさらわれるような状況で、目論見どおりには全く運んでおりません。
また、100隻受注などと誇った割には赤字になる公算が高くなっています。
というのは、世界的な資源価格の高騰で、主な材料である鋼板価格も上昇しおり、カタールとの契約価格で納品すると赤字になる見込み――だからです。
2020年には、LNG船の価格は17万4,000万立法メートルクラスで1億8,000万ドルほどだったのですが、2022年現在には「2億2,000万ドル」まで上昇しています。建造用の部材が値上がりしているので当然といえばそのとおりですが、22.2%も上がったのです。
揚げ句、契約書には「原材料の値上がりについての条項がない」というのです。安値で受注してくるからそういうことになるんだ、という話ですが、韓国の造船会社は困り果てている様子。
韓国メディアの報道によれば、カタールとの値上げ交渉に入っているとのこと。
「カタールがねぎるのが悪い」と主張!
以下に本件を報じた『ソウル経済』の記事から一部を引用します。
国内造船「ビッグ3」がカタールで「23兆ウォン」規模の歴代級受注を上げても赤字になるという展望に株価が急落している。
造船原価の20~30%を占める鋼板(厚さ6mm以上の鉄板)価格が急騰し、コスト負担が大きくなったが、カタール側の「船価叩き」に苦しんでいるのだ。
「安価受注」の陰が濃くなり、造船会社の実績改善が遅れる可能性が高いという分析だ。
(後略)
「カタールの船価叩き」は聞いて呆れる言い草です。
自分が納得して契約したにもかかわらず、赤字になるかもしれないのをカタールがねぎったからだとしています。全くなんでも他人のせいにする国と企業です。
そもそも2020年の第4四半期にはすでに鉄鋼価格は上昇傾向を見せていました。そもそも鉄鉱石の価格が以下のように第4四半期には不気味な上昇を見せていました。
⇒参照・引用元:『ig.com』「鉄鉱石価格チャート」
鉄鉱石の価格が上昇すれば鉄鋼製品の価格が上がって当然です。そのまま横ばいでいくだろうなどというのんきな予想の基に受注したのは自分たちです。
しかも、韓国内の製鉄メーカーに対して鋼板価格を維持させ、原材料価格のしわ寄せを強いたのです。先にMoney1でもご紹介したとおり、鉄鋼メーカーの不満が爆発。造船企業も鋼板価格の値上げを受け入れざるを得なくなりました。当然です。
呆れることに、造船会社は決算発表に際に「受注ラッシュでも赤字になったのは鉄鋼メーカーが鋼板価格を上げたからだ」などという不満を漏らし、これまた鉄鋼メーカーを激怒させたのです。
まさに、根拠のない安値で受注数だけ集めて後はどうするんだ――という懸念が今回のカタールのLNG船でも的中したわけです。
肝心の条項がなかった!
同記事内で傑作なのは以下の部分です。
(前略)
イ・ドンホン『大信證券』研究員は「一部の造船会社は原材料の引き上げ分を船価に転移できる条項を契約に入れることができなかったことを知っている」とし、「国内の造船会社の立場では難しい苦難が続く状況」と話した。
(後略)
原材料費の高騰を価格に転嫁できる契約にはなっていない――と指摘しています。つまり、契約時の価格で納品するしかないのです。そのため「ジャックポット受注でも赤字!」が見えた、というわけです。
「身から出たサビ」以外の何者でもありません。
仕方がないので造船会社がカタールに泣きついて、船価のアップを交渉しているというのです。以下に引用します。
(前略)
ただ、専門家らはカタールとの船価交渉が最悪となってはならないと見ている。キム研究員は「カタールも韓国造船会社と発注契約が成立しない場合、LNG生産プロジェクトに支障を来す」とし「協議を通じて部分的な船価引き上げが可能だと思う」と話した。
同研究員は「最高価格の2億2,000万ドルを下回るラインで船価再交渉がなされると見ている」とし「カタールの発注物量があまりにも多く、LNG船はマージンが高い船種だから赤字までには至らないだろう」と話した。
(後略)
このキム研究員は楽観的な観測を述べていますが、果たしてそうなるでしょうか? 韓国の後ろには「安値だったら任せてください」という中国企業が大きな口を開けて待っているのです。
その価格でできないんだったら中国に発注するよ――にならないでしょうか。
韓国のようにできもしない価格で受注するような国があるとよその国が迷惑します。読者の皆さま、韓国の造船企業というのは、このような無茶苦茶な経営を行っているのです。
先にご紹介したとおり、Big3といわれる会社は全部巨額の赤字です。
今回の鋼板騒動で、さらなる損失引当金を積まなければならないでしょう。どうなるでしょうか? もちろん赤字が拡大するのではないか――と考えられます。
(吉田ハンチング@dcp)