まず冒頭でお断りしておきますが、筆者の意見ではありません。
米紙『Consumer Reports(コンシューマー・リポート)』が「Why So Many Hyundai, Kia, and Genesis Vehicles Are Getting Recalled for Fire Risks」(なぜ現代と起亜、ジェネシスの自動車は、かくも火事リスクのリコールが多発するのか?)というタイトルの記事を出しているのです。
火事リスクのリコールがまた9万台
タイムリーにご紹介しそこないましたが、2024年02月16日、アメリカ合衆国の『NTHSA』(National Highway Traffic Safety Administrationの略:米国運輸省道路交通安全局)が、
「スターターソレノイドに水が浸入してショートを引き起こす可能性があり、駐車中または走行中にエンジンルーム火災を引き起こす可能性がある」
として、『現代自動車』の2015-16年式ジェネシス、2017-19年式ジェネシスG80・G90、2019年ジェネシスG70の一部など計9万907台のリコールを公表しました。
「また火事リスクのあるリコールなのか」「これで何度目なんだ」と思って当然です。だからこそ『コンシューマー・リポート』も「なぜこんなに火事関連のリコールが多いんだ」という記事を出すのです。
実は3,100台以上が燃えてました
なぜも何も――簡単にいえば自動車がポンコツなせいでしょうが、注目すべきは、同紙が記事内でまとめたリコールの台数です。記事から以下に引いてみます。
(前略)
両自動車メーカー(『現代自動車』『起亜自動車』のこと:引用者注)を調査する政府機関である『NHTSA』によると、2010年以降、『現代自動車』と『起亜自動車』の3,100台以上が出火し、103人が負傷、1人が死亡した。
これらの火災はエンジンの設計に関連している可能性がある。
『NHTSA』は11月、アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)の欠陥部品が原因で火災が発生する危険性のある630万台以上の『現代自動車』と『起亜自動車』の既存リコールの監査を開始した。
しかし、この数字は、配線の欠陥やブレーキシステム、バッテリーの問題など、さまざまな理由で火災の危険性が高まっている数百万台の現代自動車、起亜自動車、ジェネシス車の一部にすぎない。
(後略)
『コンシューマー・リポート』の集計が正しいのであれば、2010年以降で、『現代自動車』『起亜自動車』(ジェネシスブランド含む)の自動車は3,100台以上も火事を起こしています。
「そもそもエンジンの設計がおかしいんじゃないのか?」
上掲のこれらの火事は「エンジンの設計に関連しているのではないのか」という指摘は注目に値するでしょう。
『現代自動車』と『起亜自動車』の車両火災に関する個別リコールは60件を超えている。その多くは、「シータII」「ニューGDI」「ガンマGDI」と呼ぶ特定のエンジンの問題に関連している。
とも書いているのです。『現代自動車』と『起亜自動車』によれば――、
エンジン問題の多くはコネクティングロッド・ベアリングの欠陥に関係しているという。
コネクティングロッドは、エンジンのピストンとクランクシャフトの間にある重要な部品で、ベアリングはコネクティングロッドとクランクシャフトの間にある。ベアリングのいずれかが故障すると、ドライバーはまずノッキング音、過度の振動、あるいはエンジンストールに気付くだろう。結果、エンジンに深刻な損傷が生じる可能性がある。
場合によっては、コネクティングロッドがエンジンブロックに穴を開け、オイル漏れを起こして火災を引き起こす可能性もある。
(後略)
――とのことで、「分かっているなら直せよ」なのですが、「『現代自動車』と『起亜自動車』は、コネクティングロッドベアリングの不具合を検知し、エンジン損傷の可能性を防ぐことができるノックセンサー検知システム(KSDS)アップデートと呼ばれるソフトウェアを一部の車両に搭載した」のです。
『コンシューマー・リポート』が示唆しているのは、そういう場当たりな対応ではなく、そもそもの設計がおかしいんじゃないのか?です。
また、以下の事実にも要注目です。
火災関連のリコールは以前から続いている。
2018年、『Highway Loss Data Institute』は、『現代自動車』と『起亜自動車』の一部モデルは、他のブランドの類似車と比較して、クラッシュに関連しない火災保険請求が発生する可能性が2倍以上であることを明らかにした。
2019年、『NHTSA』は消費者保護団体である『Center for Auto Safety』からの陳情を受け、火災に関する調査を開始した。州検事総長グループは同年、複数州を対象とした調査を開始した。
2020年、『NHTSA』はタイムリーにリコールを行わなかったとして、各社に民事罰(総額2億1,000万ドル)を科すと発表。
2021年には、この罰則につながる情報を『NHTSA』に提供した内部告発者に、NHTSA初の内部告発者賞となる2,400万ドルが授与された。
2023年には、両自動車メーカーとも、先にリコールされた車両の追加修理を含め、約400万台のリコールを実施した。
『NHTSA』の欠陥調査室はまた、『現代自動車』と『起亜自動車』の過去のリコール16件の監査を開始した。
同局によると、この監査は、リコールが期限内に出されたか、十分な台数が含まれていたか、適切に報告されたかを評価することを目的としている。『NHTSA』はまた、欠陥と修正が異なるリコールキャンペーン間で関連しているかどうかも調査している。
(後略)
火災リスクに関するリコールが公表されるたびに、
「車両を駐車していても発生する可能性があるため、リコール修理が完了するまでの間、屋外に駐車し、建造物や他の車両から離れるように勧告」
といった勧告が出るのですが、オーナーならうんざりするでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)