中国も「超高層の呪い」にやられた――そういえるかもしれません。
「超高層の呪い」というのは、経済の調子が良いからといって「世界一のビルなど建設すると、とたんに経済が傾く」というものです。
韓国メディア『朝鮮日報』の説明を引用すると以下のようになります。
天文学的費用が入る超高層ビルの建設は、主に不動産バブル機に推進されるが、実際に建築が本格化したり完工したりした時には、バブルが消えて経済不況を迎えるというのが「超高層の呪い」だ。
Money1でも先記事でご紹介したことがありますが、この「超高層の呪い」は、もともとは『Dresdner Kleinwort Wasserstein』の不動産アナリストであったAndrew Lawrence(アンドリュー・ロレンス)さんが提唱した概念です。
これまでにあった「超高層の呪い」の例を挙げると、以下のようなものです。
●アメリカ合衆国「エンパイア・ステート・ビルディング」
建設期間:1929年~1931年
1929年:世界恐慌●アメリカ合衆国「ワールドトレードセンター」
建設期間:1966年~1973年
1973年:第1次オイルショック●マレーシア「ペトロナス・ツインタワー」
建築期間:1992年~1998年
1997年:アジア通貨危機●台湾「台北101」
建築期間:1998年~2004年
2001年:ITバブル崩壊●UAE「ブルジュ・ハリファ」
建築期間:2004年~2010年
2008年:リーマンショック
2009年:ドバイ債務危機●韓国「ロッテワールドタワー」
建築期間:2009年~2017年
2008~2009年:韓国通貨危機
上掲の例では、曲がりなりにもビルは完成しています。
しかし、着工されたものの、竣工しなかった巨大な廃墟が中国にあるのをご存じでしょうか?
世界で最も高い「廃墟」は中国にある!
読者の皆さんもYouTubeに上がった動画などで一度は見たことがあるのではないでしょうか。
中国天津市にある「高銀金融117」ビルです。
総工費は700億元、高さ596.49メートルで、完成すれば世界最高層レベルの建築物の一つとなる予定でした。地上128階、地下4階建てで、このうちの117階は住宅、ホテル、オフィススペースとして、残りの11階は機械室や運営サービス用になるはずだったのです。
ところが、香港『高銀地産グループ』が2015年半ばの中国株式市場の崩壊後、資金繰りに行き詰まりました。同年09月には上棟を終えた後、工事が停止。
2020年12月には無期限の工事中断となりました。また「高銀金融117」の失敗に怒った、中国国家発展改革委員会は2021年に「500メートルを超える建築物の建設を禁止」し、さらに250メートルを超える建物も厳しく制限する――と発表しました。
結果、天津市には世界最高の高さを誇る廃墟が残ることとなったのです。これまた「超高層の呪い」といえます。しかも竣工しなかった物件です。
(吉田ハンチング@dcp)