アメリカ合衆国では第2期トランプ政権が始まり、中国に依存している韓国企業がピンチになっています。中国で生産している「半導体」も先行きが不透明です。
『SKハイニックス』は中国への投資を進めてきましたが、この先も安定して利益を上がられるだろうか……が問題です、
韓国メディア『ソウル経済』は「トランプストームに巻き込まれた『SKハイニックス』」というタイトルの記事を出していますが――、
(前略)
業界関係者によると、『SKハイニックス』のクァク・ノジョン代表取締役(社長)は、トランプ政権2期目の発足直後、中国・無錫を訪れ、杜小剛・無錫市党委書記と会談を行った。
(後略)
――と報じています
『SKハイニックス』の中国ファウンドリーは無錫と大連にあります。
無錫……DRAMを生産
『SKハイニックス』の半導体生産(売上高)の30%
大連……NANDフラッシュを生産
『SKハイニックス』の半導体生産(売上高)の20%
(インテルから購入したSSD生産を担当)
※「30%」「20%」はこれまでの数字。2024年第3四半期には60%が合衆国向けとなっています。これは価格の高いHBM(高帯域メモリー)の需要に支えられてのこと。HBMは中国に輸出できませんので合衆国での売上が増加して当然です。
無錫にあるファウンドリーは生産の30%を担う重要拠点です。
業界では『サムスンSDI』のクァクCEOと杜書記が、無錫の半導体工場の運営方針について協議した可能性が高いと見ている――とのこと。
2019年に合衆国が対中制裁を開始して以降、最先端半導体製造に不可欠なEUV(極端紫外線)露光装置やDUV(深紫外線)露光装置の導入が制限され、生産能力の拡大にも制限が掛けられています。
反中大将たちを率いるトランプ大統領が再登板になったわけですから、「どうすんべ」となって当然です。
中国から足抜けできない『SKハイニックス』
崔泰源(チェ・テウォン)会長は2023年07月、
「中国という大きな市場を諦める? 私たちには回復力がありません」
「最大の貿易パートナーである中国市場を全て失ったら、代替市場を突然見つけるのは難しい」
「主導権を一度失えば取り戻すことはできない。官民がワンチームで対応しなければならない産業がある」
――と述べています。また、2024年05月には、国務院副総理・何立峰さんと面談し、
「『SKグループ』は中国経済に対する自信に満ちており、中国への投資と協力を引き続き推進していく」
――と述べました。このように述べた以上、崔泰源(チェ・テウォン)会長は足抜けできません。たとえは悪いですが「ヤクザの企業舎弟になっちゃった」みたいなものです。
それは無錫ファウンドリーがまだ稼いでいるという現実が一つ※。もう一つは「無錫市からすれば雇用(数千人と目されている)を提供している重要企業だから」です。
たちの悪い中国共産党からしても、逃げられるわけにはいかず、そのため「逃がすようなことはしない」のです。もし『SKハイニックス』が中国事情から撤退などしたら、何立峰さんのメンツを潰したことにもなりますので。
2024年上半期時点
総売上:2兆6,624億ウォン
純利益:1,194億ウォン
※純利益率:4.48%
――という結果で、半導体やってる割に利益率が低すぎないか?です。また2023年上半期には1,656億ウォンの純損失を出しています。
大連では『インテル』からババを引いた
大連の方は、Money1でもご紹介したことがありますが、インテルから購入したファウンドリーでSSDの生産を行っています。

簡単にいえば、『インテル』に「赤字の事業」を背負わされたのです。当時、韓国メディアは「『SKハイニックス』がメモリー半導体の分野でさらに重きをなすようになる」「インテルも屈服」みたいな記事を出していました。
Money1でもご紹介したとおり、真相はまったく逆で、すでに合衆国は対中国の締め付けを始めており、「今中国工場なんか購入してどうするんだ」というものだったのです。
自分から火中に手と突っ込んで栗を拾ったのです。
このインテルから購入した大連ファウンドリーは、当時の買収条件についての報道が正しかったとすれば――、
2025年03月、第2次契約クロージングで2兆3,000億ウォンを支払う
2025年03月まで大連工場の運営権は『SKハイニックス』には譲渡されない
――でした。
「2025年03月」は今月です。
「どうすんだろう」な『SKハイニックス』ですが、合衆国が対中国で締め付けている以上、できることは限られています。
そもそも「中国に半導体を渡すな」戦術を始めたのは前期トランプ政権です。『SKハイニックス』は、中国リスクが健在しているのに、それをまるで見ないかのように中国傾斜を続けました。
――で現在です。中国から手を引くこともできず、さらに突っ込むのはもっと無理です。
予測されたことではありますが「進退窮まった」ように見えます。ただし、合衆国での売上高が増加し、これまでのDDR5やNANDでもう儲けが出ないと判断すれば撤退しよう――になる可能性はあります。
この場合には、無錫市から「撤退すんじゃねーよ」と戦いが繰り広げられるでしょう。
(吉田ハンチング@dcp)