2024年04月10日、韓国「第22代 国会議員総選挙」投開票が行われました。結果は、Money1でもご紹介したとおり、政府与党『国民の力』の勢力が弱くなるという大惨敗でした。
ただし、韓国メディア(また日本メディアでも)は大惨敗といっていますが、『国民の力』の議席数は6議席減っただけです(改選前114議席 ⇒ 総選挙後108議席)。
また、「やった国会の2/3をおさえた!」という、『共に民主党』と曹国(チョ・グク)さんの『祖国革新党』による歓喜の声は単なる糠喜びに終わりました。
メディアの出口調査予測が間違っていたのです。
メディアの予測では、『共に民主党』単体とその衛星政党だけで190議席いくかも……だったのですが、175議席にとどまりました。そのため、『祖国革新党』の10議席以上を足せば201議席で2/3以上だー!という目論見が完全に外れました。
『国民の力』以外の全ての党が結託しても200議席に達しませんので(192議席)、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は国会で通過した法案を拒否でき、また『国民の力』が誰1人造反しなければ、国会に差し戻しになった法案の施行を阻止できます。
つまり、『共に民主党』が多数を頼み国会でいかに法律を通過させようとも、大統領の権限で拒否できますし、『国民の力』の議員が総出になれば立法について『共に民主党』の思いどおりになることはないのです。
『国民の力』議員たちの結束が崩れなければ――ですが。
なぜ『国民の力』は負けたのか?
では、なぜ『国民の力』は総選挙で負けたのでしょうか? 韓国でも日本でも識者はいろいろ分析していますが、韓国ウォッチャーとしての意見をいわせていただくなら、理由は簡単です。
韓国の「保守寄り」の有権者が尹錫悦(ユン・ソギョル)政権支持から離れたからです。
もっと分かりやすくいえば、「左派・進歩系、特に前文在寅政権下で甘い汁を吸った人士を徹底的に締め上げなかった」のが原因で、保守寄り勢力が尹錫悦(ユン・ソギョル)さん支持から離れたのです。
そもそもなぜ尹錫悦(ユン・ソギョル)さんが大統領候補となり、大統領選挙で勝てたかというと、左派・進歩系の文在寅政権があまりにもひどく、これを倒さないと(自由主義陣営国側に立つ国としての)韓国の未来が危険だと危機感を持ったからです。
文在寅政権下で検察総長を務めながらも、最後には対立し、逃げなかったという態度が評価されたのです。
つまり、尹錫悦(ユン・ソギョル)を大統領に押し上げた人たちの希望は、「あの文在寅やその一味をなんとかしろ」でした。具体的にいえば、検察の力を持ってギュウギュウに締め上げ、起訴し、監獄に送れ――です。
韓国の政権交代は王朝交代です。先の王朝のレガシーは全て葬られ、なかったことにされます。また、先の王朝の忠臣どもは、社会的に抹殺されるのが普通です。だからこそ韓国という国では、大統領は、退任してからたいていひどい目に遭うのです。
ところが、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領は、就任して以降、そのような動きは中途半端でした。
「保守寄り」の皆さんは、
「なぜ文在寅を捜査しない?」
「なぜ秋美愛(チュ・ミエ)を野放しにする?」
(この人は総選挙でちゃっかり当選しました)
「なぜ不正な所得を得た左巻きの市民団体を摘発して監獄に送らないのか」
「なぜ選挙不正を行った者を処罰しない」
「なぜ李在明(イ・ジェミョン)を徹底的に調査し、さっさと監獄に送らない?」
などなどの不満を持ち、それが積み上がっていったのです。
いかにも韓国らしい風景ですが、文在寅政権下で痛めつけられた「保守寄り」の皆さんが望んだのは、左派・進歩系への徹底的な復讐であり、それを達成するために尹錫悦(ユン・ソギョル)さんを大統領にしたのです。
尹錫悦(ユン・ソギョル)さんは司法畑一本でここまで来た人なので、韓国の政権交代がいかなるもので、韓国政界がいかなる場所なのかを理解していません。
左派・進歩系への復讐を行わない尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領への、保守寄り勢力からの支持が薄れても当然です。保守紙と呼ばれる『朝鮮日報』が「総選挙で負けたらすぐ大統領をやめろ」などという社説を出すぐらいなのです。
韓国では、政権を取ったら徹底的に先の政権関係者を糾弾し、監獄に送らなければなりません。それができなかった尹錫悦(ユン・ソギョル)さんと韓東勳(ハン・ドンフン)さんは、優しい、あるいはより理性的なのかもしれません。
しかし、勝負事というのは徹底度のない方が負けます。
「保守寄り」勢力の望みを果たすことのできなかった尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領、また政府与党『国民の力』は負けるべくして負けました。
自由主義陣営国側に残留しなければ韓国の未来はないとして、尹錫悦(ユン・ソギョル)大統領、政府が行った施策に特に瑕疵があったわけではないのです。左派・進歩系を徹底的に締め上げるのができなかった――つまりは、自分が選ばれた理由に対する理解が足りなかったことが総選挙で破れた理由です。
「オレたちが希望したことをやってくれなかったじゃないか。もう支持しない」と、保守寄り勢力の支持が薄くなり、だから総選挙で勝てなかったのです。
(吉田ハンチング@dcp)