韓国のメモリー半導体大手として知られる『SKハイニックス』が、『インテル』のメモリー事業を「10兆3,000億ウォン」で買収すると公表されています。韓国メディアでは「やったー!」と歓喜の声が上がっていますが……大丈夫なのかという声もあるのです。
NAND型フラッシュメモリー
SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)
ウエハー
中国・大連の製造工場
まず『インテル』の主な売却事業は非揮発性メモリー・ソリューション・グループ(NSG)部門です。ここは2020年第2四半期には前縁同期比で76%増の売上16億5,900万ドルを上げています。
なんで売却するのかという感じですが、実は2019年の決算では同グループは「売上高:43億6,200万ドル」で「営業利益:-12億ドル」でした。
『インテル』全体の売上が「719億6,500万ドル」でしたから、同グループは約6%を占めますので、そこまで大きな規模ではありません。また、メモリーは市場で高値安値の波を大きくかぶります。2019年のように赤字で締まることもあります。
つまり、売上規模はそこまで大きくないし、赤字になる可能性もあるのなら売却してもいいだろう、というわけなのです。
『SKハイニックス』は『インテル』の事業を買収することで規模を拡大、「これでNAND型フラッシュメモリーの分野で『サムスン電子』に続いて2位になる」という予測も出ています。
しかし、考えようによっては価格が時価で上下動のある事業が拡大するわけです。黒字幅が拡大するなら赤字幅だって拡大します。リスクが拡大すると見ることだってできます。
また売却対象に、「Optane(オプテイン)」は含まれていません。 「Optane」は『インテル』と『Micron(マイクロン)』が共同で開発した「3D XPoint」高速メモリー技術を使ったSSDのことです。この技術は渡さないということです。
さらには、アメリカ合衆国と中国が半導体を巡ってもめている中、大連の工場を引き受けるというのは大丈夫なのでしょうか。
また、この買収契約で興味深いのは以下の点です。
2025年03月、第2次契約クロージングで2兆3,000億ウォンを支払う
2025年03月まで大連工場の運営権は『SKハイニックス』には譲渡されない
半導体の生産工場の運営権は2025年03月まで『SKハイニックス』のものにはなりません。しかし、買収金額の約8割は2021年に支払わなければならないのです。これはかなりのリスクに見えます。
というのは、この8兆ウォンをどうやって調達するのかです。
『SKハイニックス』の財務諸表を確認すると「現金および現金性資産」が約5兆ウォンあります。足りませんね。恐らく社債発行、借り入れなどであと3兆ウォンを調達するでしょう。さて、その時『SKハイニックス』の財務状況は健全で、何かあったときに耐えられるものでしょうか。
規模を拡大して世界第2位になったとしても経営が危うくならなければいいですね。
(吉田ハンチング@dcp)