米韓「通貨スワップ」を締結してもウォン安は止まらないぞ――という話

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ウォン安がずんずん進行しており、通貨安が止まりそうな気配がありませんので、韓国メディアでも「米韓通貨スワップが必要だ!」「バイデン大統領が訪韓した際には通貨スワップの締結にしなければならない」といった記事を出しています。

しかし、アメリカ合衆国『FRB』(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)が仮に韓国とドル流動性スワップ(韓国側呼称は「通貨スワップ」)を締結したとしても、それでウォン安の進行が止まるのか?――は疑問です。

そもそも為替レートというのは基本的に通貨量の比で決まります。

合衆国が金融引き締めを行ってドルの流動性を絞っているので、ドルの価値が上がっているのです。しかも、合衆国は06月、07月も政策金利を連続で引き上げ、さらに引き締めに向かうことが確実視されています。

つまり、当然トレンドとしては「ドル高」方向で動きません。

ドル流動性スワップが安全弁となる理由

このような背景の下、至極当然の方向でウォン安が進行していますから、韓国が合衆国と「通貨スワップ」を締結したからといって、それで市場の動きが止まるとは……とても考えられません。

つまり、韓国メディアは原因と結果を誤断しています。

韓国が経済危機に陥るかもしれない ⇒ 資金を回収しなければウォン売りドル買いの進行通貨安

というルートをたどり、ここに「合衆国が韓国と通貨スワップを締結」で、「経済危機が避けられそうだ」となって、「じゃあ、まあ資金を引き上げないでおこう」⇒「通貨安が止まる」――これならドル流動性スワップは効果を発揮します。

つまり、合衆国がドル流動性スワップを提供してくれる(=ドルを供給してくれる)という「信用」で経済危機への懸念が沈静化し、通貨安が止まるわけです。

韓国が好きな言い方「安全弁」というのはそういう意味です。

ですので、結果として通貨安を止める効果はありますが、根本は「通貨安を生じさせる(つまりは資本逃避を生じさせる)経済に対する信用下落」を止めることができる――というのがドル流動性スワップの力です。

なにせ、世界唯一の覇権国家・合衆国の連銀がその国の中央銀行に直接「600億ドル」ものドルを供給してくれるのですから(2021年12月31日で終わった契約の場合)。

ところが、現在起こっているウォン安は合衆国の金融引き締めによって生じています。それをドル流動性スワップの締結によって止めようというのがおかしいのです。

考えてもみてください。合衆国と無期限、無制限のドル流動性スワップを確保している日本の円はとても安くなっています。日本円ほどではないにしろ、ユーロポンドスイスフランカナダドル、どのハードカレンシーもドルに対して安くなっています。

つまり、連銀と無期限、無制限のドル流動性スワップを締結している5つの中央銀行の全ての通貨がドルに対して価値を減じているのです。

ドル流動性スワップを締結したからウォン安は止まるでしょうか?

米韓通貨スワップがあってもウォン安は止まらない

さすがに、韓国メディアでもここにきて「米韓通貨スワップを締結してもウォン安が止まるかどうか疑問」という記事が出ました。

以下に『ソウル経済』の記事の一部を引用します。

(前略)
常設通貨スワップが締結されても、ウォン価値の下落を防ぐことができるか疑問だ。

現在、連銀と常設「通貨スワップ」を結んでいる日本とEUも、円とユーロの価値暴落を経験している。

(中略)

匿名を求めた経済学者は「今、ウォンの弱気現象は過去のグローバル金融危機やコロナ19の状況とは明らかに異なる状況であるだけに、常設通貨スワップが効果があるか疑問」とし「常設通貨スワップを締結中の円やユーロも価値が落ちたことを見ると、ウォンの弱さを元に戻せるとは見にくい」と話した。
(後略)

⇒参照・引用元:『ソウル経済』「韓 아닌 美 원해야 가능…통화스와프의 정치학 [조지원의 BOK리포트]」

というわけで、韓国メディアでは珍しく「米韓通貨スワップがあっても現在のウォン安は止められないのではないか」という意見が披瀝されています。

また、何度だって言いますが、流動性を絞ろうとしている連銀が、なぜ今他国の中央銀行とドル流動性スワップを締結するはずがあるでしょうか。韓国が必死に泣きついてバイデン大統領が根負けする、などでもなければ通常は考えられません。

名前のとおり、ドルの流動性を供給するものなので「ドル流動性スワップ」というのですから。

――ですので、韓国はウォン安を止めたければ、自分でなんとかするしかありません。といっても、為替介入すればするほどドルが溶けるのですが。

(吉田ハンチング@dcp)

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