ドルウォンのレートが「1ドル=1,300ウォン」を上回り、韓国メディアはまた大騒ぎになっています。
よせいばいいのに、またぞろ「通貨スワップを締結すべき」という声が上がっています。「すべき」も何も相手が拒否すれば締結などできませんし、そもそも「通貨スワップ」を締結したからウォン安が止まるのかは甚だ疑問なのですが。
例えば、『ソウル経済』には2022年07月05日「外国為替市場衝撃安全弁…『米・日通貨スワップ急いで』」というタイトルの記事が出ています。
毎回見る「通貨スワップとはマイナス通帳のようなもので……」という説明が入って、「要るんだ」と力説しています。韓国にとっては要るのかもしれませんが、日本、合衆国にとっては不要です。
注目すべきは以下の部分です。
(前略)
19日、韓国を訪れるジャネット・イエレン米財務長官との米韓財務長官会議で、米韓通貨スワップ復元などの外国為替市場の安定化案が具体的に議論される可能性がある。これに先立ち、米韓両国は今年05月首脳会談共同宣言文を通じて、外国為替市場安定のための協力必要性を明らかにしただけに、今回の財務長官会議で後続措置が出るか注目される。
(後略)
先にご紹介したとおり、アメリカ合衆国財務省のジャネット・ルイーズ・イエレン(Janet Louise Yellen)長官は、インドネシアで開催されるG20財務相会合出席(15・16日)に出席した後、2022年07月19日に韓国を訪問する予定です。
イレレンさんと会談予定の、企画財政部・秋慶鎬(チュ・ギョンホ)副首相兼企画財政部長官は、
今回の会議は05月に行われた両国首脳間の出会いに続き、米韓の経済的絆を深め、拡大するきっかけになると期待される」
と述べています。この「金融協力」の中に「通貨スワップ」(合衆国側ではドル流動性スワップ)を入れて話すつもりなのかもしれませんが、メディアではなぜか「きっと話すだろう」と盛り上がっているのです。
併せて「日韓通貨スワップも再開すべし」という主張も高まっているご様子です。以下をご覧ください。
(前略)
しかし最近、ウォン・ドル為替レートが1,300ウォンまで上昇するなど、外国為替市場の不安が広がり、米国・日本との通貨スワップ復元せよという主張が徐々に力を増している。
(後略)
力を増されても困るわけですが、日本の場合には麻生太郎閣下が述べた「しかるべき仁義を踏んでもらおう」がいまだになされていませんので、可能性はほぼありません。
もし、岸田政権が日韓通貨スワップの再開に動いたら、日本国民から総スカンを食らう上に、麻生閣下の言葉を否定することになります。
念のために以下に、麻生閣下の言葉を再度引用します。
「長ーい話ですんで。
えーっ……そうですね……外務大臣のころからですから……もう十数年……何百億ほどありましたかね、通貨スワップは。だんだん減ってきて。ずいぶん減ってきたんだと思っておりましたが。
民主党政権の時代にさらにガタッと減ってますわな。
そして安倍内閣が再スタートしたときに確か……音喜多先生、150億ぐらい残ってたと思うんですね。
日銀で50、財務省で100くらい残っておったと記憶しますけれど……だんだん減ってきてますんで、日銀の50が減ったときに……最後の100が財務省になったときに、
向こうの財務大臣に『大丈夫か?』と。『金回んなくなるだろうが』って言ったら『いや、大丈夫』って。
『あ、そう』って放っておいたら困ったような顔になってきたんですよ。
『もう一回だけ言うぜ。大丈夫か?』って言ったら、『そっちが借りてくれと言えば借りてやらないこともない』とぬかしたものですから、ふざけるなと思って席を立って『はい、さいなら』。それが最後で。
それから今日まで……韓国の場合はウォンと元のスワップをしておられる、と思うんですが、元とウォンの間のスワップじゃ……間に一回入ってそれからドルに換わりますんで、コストが上がるということで、ずいぶん割を食っておられると思いますが。
その後再開というお話がありましたんで、あの、元はといやそっちが断ってきた話だろうが、と。
こっちは言ったのに、そっちが断ってきたのに、何を今さら頼みにくんだよ、と。
ちゃんとしかるべき仁義は踏んでもらおう、という話ですよね。日本的にいえば。
ちゃんとやってもらおうといったらいきなり……例の銅像ができちゃうっていう話ですから。
で、もう全然話になりませんから……今んところ向こうが言っておられるというのは、うわさじゃあ聞いておりますけれども、私たちは財務省として直接その話は聞いたことはありません」
※麻生太郎財務相の答弁動画から書き起こしました
「自分でいらないって言ったろうが」というのが経緯ですので、まず過去の非礼について詫びるなど筋を通すべきでしょう。ですので、日韓通貨スワップは無理筋です。
米韓通貨スワップもイエレン長官からすれば、「『FRB』(Federal Reserve Boardの略:連邦準備制度理事会)に言うべき」という話です。
いずれにせよ、韓国政府、および『韓国銀行』がイエレン長官に本当に「通貨スワップ」について相談するかどうかにご注目ください。
外信では、イエレン長官は韓国政府と「ロシア産の石油の取引価格に上限を設ける案」について相談するのでは――という推測が出ています。韓国はG7に招待されませんでしたので。
(吉田ハンチング@dcp)