中国は恣意的に外国人を拘禁します。
特に『反スパイ法』改正以来、中国にいるのは危険です。自由主義陣営国の人は中国に行くリスクを考えなければなりません。
アメリカ合衆国・ニューヨークに本部を置く独立系シンクタンク『The SOUFAN Center(スーファンセンター)』は、「CITIZENS FOR LEVERAGE:Navigating State Hostage-Taking in a Shifting Geopolitical Landscape」と題する特別報告書を発表しました(下掲が表紙)。
これは、中国、イラン、ロシアなどの権威主義国家が交渉の材料や外交目的で外国人を不法に拘束したりしていると指摘しています。
以下はリポートのサマリーの全文和訳です。面倒くさい方は飛ばしていただいても大丈夫ですが、強調文字などの部分だけご覧ください。
要旨
-政治的駆け引きの材料として人間を利用することは、21世紀にはふさわしくない恐ろしい行為である。
しばしば「人質外交」あるいは「国家による人質奪取」と呼ばれるように、今日、イラン、ロシア、中国のような多くの国家が、外国人を刑事司法制度の中で不法に拘束し、外交政策の手段として利用している。
–以下の国々は、公に報告されている事件の当事者である:
オーストラリア、ベルギー、カナダ、フランス、ドイツ、日本、スウェーデン、イギリス、アメリカ、欧州連合(EU)だけでなく、多くの国が自国民に対し、このような行為を行っている国への渡航を注意する勧告を出している。-国家による人質の問題は、一貫した注意が必要であり、見出しや知名度の高い事件によってのみ推進されるべきではない。国家による人質行為は、そのひとつひとつが悲劇的で、長く、複雑である。
-国家による人質は、拘束された個人とその家族だけでなく、国民が標的とされた政府の対外政策にも多大な犠牲を強いる。
ジョセフ・バイデン米大統領は昨年、人質事件と米国人の不当拘束を国家非常事態と宣言した。
2021年、カナダは「国家間関係における恣意的抑留に反対する宣言」を発表し、70カ国以上と欧州連合(EU)がこれを支持した。
-国家による人質奪取の台頭は真空地帯で起こったのではなく、大国間の対立が多国間の協力に影を落とす地政学的情勢の中で、パワー・ダイナミクスの変化と連動して起こったものである。国家による人質司法が繁栄し、存続するための条件は整っている。
-加害国にとって、単一のプレイブックなど存在しないのだ。国家による人質行為はどのケースも独特であり、ケースに応じた対応が必要とされる。このような慣行を行っている権威主義国家はほんの一握りであるが、もしこの慣行が強く非難されなければ、より多くの国家がこの慣行を効果的な手段と見なし、あるいは現在この慣行の加害者となっている国々が、より頻繁にこの慣行を用いることを選択するかもしれないという懸念がある。
-国家による人質行為に対処する際、各国政府は、拘束されている市民を帰国させることと、この行為を抑止することという、同様に重要な2つの課題に焦点を当てる必要がある。
抑止は優先されなければならないが、現在の人質を犠牲にしてはならない。
人質個人の解放を確保するためには、しばしば困難な交渉が必要となる。可能な限りの譲歩を相殺するために、政府は個別のケース以外でも、加害国の負担を増やすためにもっと努力しなければならない。
-影響を受けた国々は、通常の領事業務とは別に、政府内に説明責任を果たす組織を設けるなど、国内対応能力を強化する必要がある。家族は、政府と共に働く信頼できるパートナーとして扱われるべきである。
-被害者は正義を受けるべきであり、加害国はマグニツキー制裁、渡航禁止、金銭的罰則、資産差し押さえなどの既存の手段をさらに活用し、責任を追及されなければならない。
-国家による人質事件のひとつひとつが人間の悲劇である。
各国政府は、あらゆる形態の人質事件を管理する準備をしなければならない。今日の複雑な地政学的状況は、国家と非国家双方の加害者がこうした犯罪を犯すための条件を提供している。
日本についての記述もあります。以下をご覧ください。
A GLANCE AT JAPAN
2023年3月、中国は日本の製薬会社『アステラス製薬』の幹部を拘束した。
この拘束は、2015年以降、中国による日本人拘束の17件目となった。
日本の外務省によれば、現在5人の日本人が中国で拘束されており、うち2人はすでに判決を受け、1人は公判中、アステラス製薬の幹部を含む2人は逮捕または拘留中である。
日本の岸田文雄首相は幹部の早期釈放を求めているが、中国は、このようなケースは「法に則って処理する」と述べている。
中国で日本人の恣意的な拘束が急増するなか、こうした拘束に注目が集まっているが、この問題は今に始まったことではない。
2010年には、日中両国が領有権を争っている島の近くで、日本が中国船の船長を拘束した後、中国が4人の日本人を逮捕している。
多くの中国アナリストは、最近の拘束の急増は、中国が2014年に新しい国家安全保障法を採択し、スパイ容疑の可能性の範囲を拡大したことに起因する、としている。
中国の法律では、国家機密を構成する情報を広くとらえ、他国では無害とみなされるような情報も含まれる。
この点は、スパイ容疑で中国の刑務所に6年間服役し、最近日本に帰国した日本人の鈴木英司氏も指摘している。
『ニューヨーク・タイムズ』紙の取材によれば、鈴木氏は「中国の学者との夕食会での北朝鮮についての世間話から始まった」という。
彼はまた、日本政府の「彼を助けるための弱い努力」を批判してきた。
公の場で発言することで、彼は「日本政府に恥をかかせ、北京の言いなりになっている他の人々を助けるための強力な行動を取らせ……危機管理のための強力なシステムを作りたい」と考えている。
2023年4月、北京を訪問中の林芳正外相は記者団に対し、中国側と日本人の拘束について話し合ったことを明かし、「最近北京で日本人が拘束されたことに対し抗議を行い、この日本人の早期釈放を含め、この問題に対する我々の立場を強く主張した」と述べた。
林はさらに、「日本は、中国における自国民の拘束に関する法的プロセスの透明性を求めており、中国に対し、公正で安全なビジネス環境を確保するよう求めている」と強調した。
日本は、「国家間関係における恣意的な拘束に反対する宣言」を支持し、特に経済的強制をめぐる中国の強圧的外交に対し、より協調的なG7対応を積極的に展開してきた。
中国に6年間も拘束された鈴木さんが「外務省に恥をかかせ……」と考えているというのは、少し言い過ぎな感があります。鈴木さんの著作を読むと、鈴木さんは“救出するために尽力した「一部」の外務省の職員”に感謝をしていらっしゃいます。
しかし、一方で役に立たず、中国のいいなりに6年間も拘束させたことに怒りを表明していらっしゃるのも確かです。
日本人は鈴木さんの著作『中国拘束2279日 スパイにされた親中派日本人の記録』を読むべきです。
日本の外務省がいかに「中国で拘禁された日本人を救うのに役に立たないか」が分かります。だからこそ、日本人は中国になど行くべきではないのです。
↑一応筆者も鈴木英司さんの著作『中国拘束2279日 スパイにされた親中派日本人の記録』を拝読しております。
(吉田ハンチング@dcp)