2024年09月03日、韓国外交部の定例記者ブリーフィングで、面白いやりとりがあったのでご紹介します。
<<質問>>
国際刑事裁判所(ICC)がウラジーミル・プーチンロシア大統領に逮捕状を発行したことを受け、金正恩北朝鮮国務委員長も北朝鮮とロシアの協力という観点から共犯として提訴される可能性があるかどうかに関心が高まっています。これに関連して韓国外交部の立場があるかどうかを知りたいです。
また、もし韓国外交部が役割を果たすなら、金委員長をICCに提訴することが可能かどうかも気になります。
(『聯合ニュースTV』チェ・ジウォン記者)<<回答>>
プーチン大統領のモンゴル訪問に関連して、私たちは関連動向を注視しています。二つ目の質問に関しては、現時点でお伝えできる外交部の立場は特にないことをご了承ください。⇒参照・引用元:『韓国 外交部』公式サイト「대변인 정례브리핑 (9.3)」
なぜロシア・プーチン大統領のモンゴル訪問が話題になっているかというと、『ICC』(International Criminal Courtの略:国際刑事裁判)から2023年03月に逮捕状が出ているからです。
『国際刑事裁判所』は、重大な国際犯罪を犯したものを裁くために設立された国際的な司法機関です。2002年に発効した「ローマ規程」に基づいて設立され、オランダのハーグに本部を置いています。
重要なポイントは、締約国には「逮捕状が出されたものを勾留する義務があること」です。
プーチン大統領は、この逮捕状のため、2023年ブラジルで開催されたBRICsの会合に出席しませんでした。ビデオ参加にとどめました。ブラジルが締約国だからです。
プーチン大統領を逮捕する義務が生じるため、ブラジル政府も「来ないでくれ」とロシア側に要請したとされます。
実はモンゴルも締約国であるため、プーチン大統領がモンゴルを訪問したら、逮捕される可能性があったのです。
モンゴル政府は逮捕しなかった!
「あった」と過去形にしたのは、2024年09月03日、堂々とプーチン大統領はモンゴルを訪れ、オフナー・フレルスフ大統領との会談を行いました(上掲写真)。
モンゴル側が義務を果たさなかったのです。この背景には、モンゴルが経済的に中国、ロシアに依存していることがあると見られます。
2024年09月02日、欧州委員会の報道官は、
「モンゴルは他のすべての国と同様に、自国の利益に従って国際関係を発展させる権利がある」
「(しかしながら)モンゴルは2002年以来、国際刑事裁判所のローマ規程の締約国であり、それに伴う法的義務を負っている」
と述べました。ここでプーチン大統領を捕まえておけばウクライナ戦争の局面も少しは変わったでしょうか。問題はモンゴルが国際的な契約を破ったことです。
ロシア安全保障会議のドミトリー・メドベージェフ副議長は、オンライン声明で、プーチン大統領に対する逮捕状は「違法」であり、それを実行しようとする者らは「狂人」だ――と非難しています。
ちなみに、このプーチン大統領のモンゴル訪問は日本にも関係があります。
プーチン大統領の5年ぶりのモンゴル訪問は、満州を支配していた日本軍に対する「ソ連とモンゴルの連合軍の勝利85周年を記念する式典」に参加するためだからです。
北朝鮮・金正恩にも逮捕状を出してしまえ!
今回の韓国外交部の記者質問に戻ります。
記者が言っているのは、プーチン大統領の共犯者として北朝鮮の金正恩さんにも逮捕状が出ませんか? もし出せるなら韓国政府が提訴しませんか?――ということです。
ウクライナ戦争で北朝鮮が果たしている役割を考えるなら、金正恩さんを共犯者だと考えることができるだろう――なのですが、「現時点でお伝えできる外交部の立場は特にない」と回答を避けました。
金正恩さんにも逮捕状が出たら、この人はうかつに外国には行けなくなります。
(吉田ハンチング@dcp)