アメリカ合衆国バイデン政権で成立したIRA(インフレ削減法)で、韓国の大手企業はみんな「合衆国に工場を建てます!」となりました。
対中国規制の対象にならないように、補助金をガッツリもらえるように――です。
しかし、先にご紹介したとおり、『現代自動車』が建設しようとしていた電気自動車工場は環境団体から「待った!」が掛かり、先行きが不透明になってきました(雇用を生むので知事など偉い皆さんは乗り気)。
今度は『サムスン電子』の半導体工場に暗雲です。恐らく目指していた時期に稼働できないでしょう。
『NEWSIS』がコンパクトにまとめてくれていますので、同紙の記事から以下に引用してみます。
(前略)
業界によると、一部の合衆国メディアは、『サムスン電子』のテイラー工場が当初予定した2026年まで先端半導体量産に着手するのが難しいと伝えた。『サムスン電子』は440億ドル(約60兆ウォン)を投資し、テキサス州テイラー市に半導体工場2カ所と先端パッケージング研究開発(R&D)センターを構築する計画だ。
合衆国政府からこれらの事業に64億ドル(8兆8,l000億ウォン)の補助金を受け取る予定だ。
去る2022年上半期に着工したテイラー市の第1工場は、20023年末時点での工事の進捗率が59.7%だ。
当初今年下半期稼働するという目標だったが、完工は後ろにずれ続けている。
これには、現地工事原材料費の上昇や人件費の増加などの影響も作用したものと見られる。
(後略)
Money1でもご紹介したとおり、早く補助金をもらうぞー!で鉄火場の工場建設だったのですが、遅れています。記事内にもあるとおり、合衆国でインフレが亢進し、資材や人件費が高騰。予定どおりの金額でできないかも……という不安の声も上がりました。
順調に遅れており、しかも補助金もまだもらえていません。以下をご覧ください。
(前略)
しかし去る4月、合衆国政府は補助金を確定発表したが、実際の支給はまだ行われていない。台湾『TSMC』の場合、補助金の一部が支給されたことが分かったが、『サムスン電子』は補助金を受け取れなかったという。
(後略)
『TSMC』は一部受け取ったというので、「ちくしょー」と歯ぎしりが聞こえてきそうです。
さらに面白いのは、工場建設で働いていた労働者がけがをして、その件で訴えられています。
(前略)
最近は現地工場建設労働者が工事現場で負傷し、『サムスン電子』を相手に100万ドル損害賠償請求訴訟を提起した。テイラー工場で板金作業をしていたこの労働者は、先月フォークリフトに載っていたダクト構造物が落ちてしまう事故によって頭と肋骨、脚骨骨折など、大きなけがを負ったことが分かった。
この労働者は、
「『サムスン電子』は施設の問題と危険性を知っていたが、適切に教育もせず、管理もしなかった」
とし、『サムスン電子』を相手に精神的苦痛および治療費名目で100万ドルを請求した。
工事は順調に遅れておりますし、負傷した労働者から「100万ドルの訴訟」が提起されているのです。誠意ある謝罪と賠償が請求されています。
それにしても「ついてない話」です。
↑2023年末時点で進捗率59.7%、つまり6割方できた『サムスン電子』のテイラー市第1工場/PHOTO(C)『サムスン電子』
これで、トランプさんが大統領に再選されて「IRAなんか全部ヤメじゃー!」となったら、どうするんでしょうか。まあ、電気自動車工場を造っている『現代自動車』よりはマシかと思われますが。
(吉田ハンチング@dcp)