BRICsのメンバーだからといって、なんでも中国に賛成するわけじゃないぞ――ということでしょう。
中国の過剰生産性に苦しめられ、対抗措置を取るのはアメリカ合衆国、EUだけではありません。
イナゴのように襲い来る中国産の製品が自国市場を食い荒らし、自国企業の業績が傾くので、対抗措置を取るのは当然のことです。
BRICsの一員であるブラジルも対抗措置に乗り出しました。
ブラジルも中国製品に追加関税を賦課する!
2024年10月17日、ブラジル大統領府が任命した閣僚顧問で構成される対外貿易会議所執行委員会(略称「Gecex」)は、中国や他のアジア諸国から輸入品される鉄鋼や光ファイバーケーブルなどについて新たに追加関税を賦課することを決定しました。
ご注意いただきたいのは「中国だけではない」という点ですが、主に中国産の製品が標的です。
鉄鋼製品はブラジルだけではなく、アメリカ合衆国や欧州、韓国にも打撃を与えていますが、ブラジルは今回11種類の鉄鋼製品について輸入関税を25%に引き上げることにしました。
興味深いのは「光ファイバー」で、『Prysmian Group(プリズミアン)』社からブラジル政府に対して泣きが入ったのです。
同社はそもそもイタリアの会社なのですが、2005年にタイヤメーカーである『Pirelli(ピレリ)』社のケーブル部門が分離・独立して設立されました。その後、世界各地で事業を拡大し、エネルギー伝送用ケーブル、光ファイバー、通信ケーブルの分野で世界的なTop企業となりました。
泣きが入るのも当然で、2019年にはブラジルの光ファイバー ケーブルの価格は、1km当たり7ドルだったのですが、現在では同じ製品が1km当たり約2.50ドルです。
価格は64.2%も下がりました。
※2024年上半期、『プリズミアン』社は78億2,000万ユーロの売上を上げましたが、このうち7億800万ユーロをラテンアメリカが占めています。
『プリズミアン』社は、このような価格の急下落を引き起こしたのが中国産の光ファイバーと訴えていたのです。
――で、ブラジル『Gecex』は光ファイバーの関税を35%に上げました(この措置は少なくとも6カ月継続される)。
中国外交部の反応は……「自由貿易を断固として支持」
35%どころではなく、もっと積めばいいのですが、このブラジルの措置は、「BRICs仲間でオレの言うことは聞いてくれるよな」だった中国を動揺させています。
中国外交部は、定例記者ブリーフィングにおいて以下のようなりアクションを見せています。
『Bloomberg』記者:
先週の木曜日、ブラジル政府は、ダンピングやその他の違法行為と闘うために、中国から輸出される鉄鋼、光ファイバーケーブル、その他の化学物質に関税を課すことを発表し、ブラジル貿易省に対し、ダンピング告発やその他の関連問題を調査するよう指示した。これについて中国はどうコメントしますか?
林剣:
具体的な情報については、中国の管轄当局に確認することをお勧めする。私が言いたいのは、中国とブラジルはそれぞれ東半球と西半球で最大の発展途上国であり、両国政府は自由貿易を断固として支持し、二国間関係の健全で安定した発展の維持にも積極的に取り組んでいるということである。
貿易。中国とブラジルの経済貿易関係の本質は相互利益とWin-Winであり、われわれは双方が関連問題を適切に処理できると信じている。
毎度おなじみともいえますが、中国外交部は「自由貿易を断固として支持」し、「双方が関連問題を適切に処理できると信じている」とお題目を語りました。
中国のいう「相互利益」というのは、往々にして相互に利益をもたらすものではありません。
(吉田ハンチング@dcp)